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インタビュー

INTERVIEW(3)――ライヴ依存症かも?



ライヴ依存症かも?



筋肉少女帯



――筋肉少女帯は98年に活動を休止して2006年に8年ぶりで復活するわけですが、インターバルを経たあと、バンドの雰囲気は変わりましたか?

「ええ、変わったと思うよ。まずね、メンバーの人格が変わってた。あれはおもしろかったなあ。それは僕も同じで、たぶん他のメンバーは全員〈大槻は変わってないところは変わってないけど、人が丸くなった〉って言うと思う。人として険が出たとか言われてたらやだな(笑)。でも、自分でも丸くなったと思う。なんて言うのかなあ、〈まあ、いいんじゃない?〉って思えるようになるんだよね、大人になると。頑なさがだんだんなくなっていくというか。そういうところはあると思うな、うん」

――活動再開後から7年経ってるわけで、その間もいろいろあったと思うんですけど……。

「そうか、もうそんなに経ってるんですね。確かにいろいろありましたよ。活動再開に向けたミーティングがあって、中野サンプラザの復活ライヴ(2006年)があって、武道館ライヴ(2008年)があって。〈フジロック〉とか〈ROCK IN JAPAN〉とか、大型フェスへの参加だったりね。ただね、単独ライヴは東名阪でしかやってないんですよ。筋少のライヴはゴージャス・ヘヴィー・メタルだから、けっこう仕掛けが大がかりなんですよね。だから、ポンと地方に行くってことがなかなかできなくて。最近、『オーケンの、このエッセイは手書きです』っていうエッセイ集を出して、いろんなところでサイン会をやってるんですよ。この前も仙台に行ったんですけど、そうするとね、宮城のみならず、秋田、盛岡、福島、新潟、それから青森からも来てくれるんです。で、皆さん〈ウチの街でもライヴやってください〉って言うんですよねえ。僕も何とかやりたいなとは思ってるんですけど。地方でライヴをやるっていうのは、モチベーションに繋がってると思いますね」

――いいですね、ライヴがモチベーションに繋がるって。

「いろんな街のお客様にお会いしたいよ。僕の場合、いま現在やりたいことってライヴ以外には特にないんですよ。ライヴって上手くいってもいかなくても、お客さんが来ても来なくても、それなりの刺激があるじゃないですか。そういう部分に依存的になってる部分もあると思いますけどね」

――ライヴ依存症?

「かもしれない。ライヴで良かったと思いますけどね、依存するものが。僕はギャンブルやらないですけど、パチンコとか競馬とかに依存しちゃったら大変じゃないですか。飲酒とか。あと、大人になるとお金に執着する人もいますよね。儲けること、巨大化することにしか興味がないっていうベンチャーな方々のなかには、そういうタイプもいるんじゃないかなあ。僕の場合はライヴだけですからね。昂揚感だったり、疲労度も含めて、ライヴがいちばんいい。そのなかでも、筋肉少女帯っていうカードはね、すごく刺激を与えてくれる切り札とも言えます。だって、空手バカボンでは〈フジロック〉に出れないでしょ……いや、〈出たい〉って言えば出してくれるかも、ディーヴォ的な感じで。そのうちマジで出たりして(笑)」

――(笑)。いまの大槻さんにとって、ライヴのおもしろさって何ですか?

「〈おもしろい〉のひと言では括れないんだけどね。これだけキャリアがあっても、ライヴで心が折れるときだってあるし。かまやつひろしさんと対バンしたときに〈ミュージシャンって、どんな仕事ですか?〉って訊いたんですよ。そうしたら〈キャリアが何の意味も持たない仕事〉っておっしゃって。ホントにそうだなって思いますね。25年やってても、昨日始めたばかりのヤツにいきなり追い抜かれたり――そんなことはいくらでもありますから。あとさ、どれだけ長くやってても、いまは〈誰? 知らない〉でおしまいだったりするじゃないですか。しかも、そこにはリスペクトも何もないっていう。そうやってスパンと切られるのは、気持ち良いくらいで」

――まあ、どんどん若い世代が生まれてくるわけですからね。

「そうなんだよね。若い人は何も知らないじゃない? リンカーン大統領でもローリング・ストーンズでも劇団四季でも筋肉少女帯でも、〈知らない〉で終わり。しかも、それが正しいことだと彼らは思ってるからね。まあ、若いってそういうことじゃない? 僕もそうだったし。そういう人たちにも知ってほしいっていうのもモチベーションのひとつなんだけど、でもまぁ、やっぱり僕は、自分のためにやってるところが大きいかな。個人的な動機に帰結してしまって、オーディエンスには申し訳ないんだけど」

――〈ライヴ以外にやりたいことがない〉っていうのも凄いですけどね。

「最近はホントにそうなんですよ。たとえば海外旅行なんて、絶対に行きたくないね! そんなの面倒臭い。映画館にすら行かないからね、最近は。『崖の上のポニョ』を映画館で観てから、『アベンジャーズ』まで1回も行かなかったんだから(笑)。〈NO MORE 映画泥棒〉を観なくちゃいけないと思うだけで、もう面倒臭い」

――(笑)。

「〈あれが食べたい〉っていうのもないし。評判のグルメの店とかに並んでるのも、意味わかんないしね。ライヴ以外で夢中になれるものが欲しいんだけどね、ホントは。格闘技や武道を始めようかな。〈合気道をやりたい〉って5、6年言ってるんだけど、まだやってない(笑)」


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掲載: 2013年05月29日 18:01

更新: 2013年05月29日 18:01

インタヴュー・文/森 朋之