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インタビュー

INTERVIEW(2)―綺麗に整っている音より、演奏者の息づかいがわかるような生々しい音が好き。

 

綺麗に整っている音より、演奏者の息づかいがわかるような生々しい音が好き。

AKI1

―ではここから楽曲について伺います。本作は、柔らかな音色がとても心地良い、安らぎと希望に満ちた雰囲気の “Birthday”で幕を開けますね。

「実はこれ、自宅で録ったものをそのまま使っています。だから自分自身もすごくリラックスした状態でギターを弾いてるんです。ちゃんとレコーディングしてもよかったんですけど、このリラックスした感じは出せないと思ったので。人間って寝てる間も細胞が生まれ変わるじゃないですか。毎朝起きるたびに、またこの世界に生まれ落ちるというか。<みんな生まれたんだ>っていう祝福をしたくて1曲目に持ってきました。タイトルも毎日が誕生日のようであればいいなという思いをこめて付けました」

―躍動感溢れるリードトラック"Lapis Lazuli"は<試練を与える>という意味にインスパイアされたものなんでしょうか。

「この躍動感は<曲を作りたい!>っていう気持ちが煽動して生まれたものなんです(笑)。ラピスラズリが与える試練は悪い試練じゃなくて、成長するための試練らしくて、試練を乗り越えるために、<前に進もう>っていう気持ちが自然にリンクしていったのかもしれません」

―なるほど。続く“Sayonara”もタイトルと曲を聴いた時のギャップが印象的でした。

「今回は聴いて頂く方にイメージやストーリーを膨らませてもらいたいなと思っていて、タイトルもワン・ワードだったり、英語で抽象的にしているんです。この楽曲は決して後ろ向きなさよならではなくて、<さよならするけどまた次があるさ>っていう前向きなイメージが僕のなかにはあります。でもイメージを肯定するのではなく、リスナーの皆さんそれぞれの人生に照らし合わせて頂けたら面白いかなと思っています」

―切なさと哀愁を感じさせるメロディが印象的な “Moon Dancer”はAKIHIDEさんらしい楽曲ですね。

「自分自身のことも月っていうイメージがあるのですが、月の下で男女の天使が舞い踊っているイメージが浮かんできて制作した曲です。バイオリンが女性でとチェロが男性で、音が絡みあっているのを僕が観てるようなイメージというか。これ、ギターがすごい難しい曲なんですよ」

―たしかにかなり複雑ですね。ライブで再現するのが大変そうです。

「そうなんですよ!だから今、めちゃめちゃ練習してます(笑)」

リスナーにイメージを委ねるため抽象的なタイトルが並ぶなか、"Okinawa"は今作のなかでも特別な空気をまとった楽曲だと感じました。

「この曲は僕のなかで最もストーリーが強い曲です。僕の母と祖母が沖縄出身なんです。沖縄は昔、第二次世界大戦の戦火にさらされていました。でも、祖母はその時の事を話さないし、そういう姿は見せず常に笑顔でいる人なんです。そんな祖母の優しい笑顔を曲にしたいなと思って作った曲です。だから優しいところから途中で激しくなる構成は、戦争だったり日々の大変なことだったり色んなことを経て、また静かに佇んで優しく笑う祖母をイメージして生まれました」

―想いが強いからこそストレートなタイトルなんですね。

「そうですね……地名ですからね。僕の曲のなかで地名がタイトルってはじめてだと思います」

―では、1番苦労したのはどの楽曲ですか?

「比較的にどの曲もすんなり出来ましたが“Home”は苦労しましたね」

―“Home”は以前から、オフィシャルサイトのBGMとして流れていた楽曲ですよね。

「はい。かれこれ7年近く使ってます。元々は、ホームページを観た時に家に帰ってきたような和やかな気持ちになってほしいなと思って作った曲なんです。ファンの方やスタッフがこの曲を気に入ってくれていて〈今作に入れてみたらどうか?〉って提案があったので入れることにしたんですが、ホームページ用の短い長さでしか作っていなかったので、それをCDに収めるには構成を面白くしないといけない。だけど、僕のなかでは40秒くらいで繰り返すイメージがあったので、それを崩すのが大変でした。全然違うアレンジを入れてみたり試行錯誤しましたが最終的には面白いかたちになりましたね」

―ファンにとっておなじみだった“Home” が遂にフルで聴けるのは嬉しいと思います。

「そうですね。そもそも、アルバムに入れようとか一切思ってない無欲の状態で作った曲ですから(笑)。ある意味、純粋な想いがこもってる曲かもしれません」

―音の対決を魅せる映像企画"Battle"を拝見しました。ものすごくカッコよかったです!! 大胆に攻めている音、計算され尽くした緻密な音の運び、そして修正無しの一発勝負だからこそのグルーヴ、緊張感が画面から伝わってきました。

「あれは、みんな大変だったと思います。大きなミスが無い限り<1発撮りね>って決めていたので」

―ギターのボディを叩いてリズムを刻んでいましたが、その他にもいろんな音が聴こえてきてワクワクしました。

「ギターって本当にいろんな音が出るんですよ。叩く場所によって、低いドラムのような音だったり、コンコンって高いカウベルのような音も出ますし、変幻自在なんです。だから面白いんですよね。そもそも叩く用途で造られている楽器ではないですけど」

―mouse on the keysの川崎 昭(Dr.)との共演はいかがでしたか?

「今回、ドラムのレコーディングは全て川崎さんにお願いしました。音に関しては<生々しさ>を出したかったんです。アコースティックギター、ドラム、バイオリン、チェロ、ベース、ウッドベース、たまにエレキギターが入るんですけど基本的に電気使わない楽器ばかり使ってます。途中、虫の音も入っているんですけど、あれは実際に富士山の麓に録りにいったんです。波の音もオーシャンドラムという楽器を使って自分で効果音を作りました。今はコンピューターですぐ修正したり色々できてしまうけど、そういうのではなくてとにかく生々しいものを作りたかった。そういう意味でも川崎さんはすごく人間味のあるドラムを叩く方で、人としても明るくて素敵な方ですし、プレイも息や視線を合わせることでより輝くドラムを叩いてくださるので今作にはぴったりでした」

―では、お二人の息は自然と合っていったんですね。

「川崎さんが合わせるのが上手なんだと思います。多少、ズレていることがあっても今の僕にはそれが気持ちいいと感じるというか。綺麗に整っている音より、演奏者の息づかいがわかるような生々しい音のほうが好きなんです」

掲載: 2013年11月10日 00:00

ソース: 2013/11/10

TEXT:伊藤愛奈

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