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ヨナタン・アヴィシャイ、ジャズへの限りない愛情の中にジューイッシュとしてのルーツが込められた作品

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アヴィシャイ・コーエン(tp), オメル・アヴィタルらとの〈サード・ワールド・ラヴ〉や、そこから派生した〈オメル・アヴィタル・クインテット〉でもメンバーとして活躍するピアニスト、ヨナタン・アヴィシャイのトリオ作品。

1977年、テルアヴィヴ生まれ。イエメン人の父親とフランス人の母親の間に生を受けたヨナタン・アヴィシャイは、幼少の時より、自らのルーツや歴史を意識していたとのこと。

本作は、ジャズへの限りない愛情の中に、ジューイッシュとしてのルーツが込められた一作になりました。特にジョン・ルイスや、デューク・エリントン、アーマッド・ジャマル、ボビー・ティモンズといったアーティストから影響を受けているというヨナタンの音楽は、基本はベーシック。

これらのミュージシャンを意識した理由こそ“意に沿った音を厳選抽出し、少ない音数で、如何に自らの音楽を奏でるか”とのことですが、ヨナタンの音楽も、スウィンギーで、ブルージー、そして音数控え目に奏でる演奏が印象的です。中でも、エリントンによる4曲目の演奏には、エリントンが切実なまでに極めた雅さも醸しだすロマンティシズムが滲みだしますし、ヨナタンが如何に、それらの演奏に敬意を払っているかを感じます。また14曲目あたりではストライド・ピアノとスウィング・リズムが絶妙に交錯。楽しさの中に古き良きジャズの時代も薫ります。

しかし、一方では、自らのルーツもしっかり意識して表現。6曲目ではデュオ演奏となり、ジョン・ルイスが愛した端正なメロディ感覚と室内楽的なものが表現されますが、フレーズの端々や、ハーモニーからはジューイッシュとしての感覚が滲み出ます。

また後半、12曲目や13曲目には、マイナー・ムードの和声や、ジューイッシュ独自のスケール旋律、舞踏のリズムなども織り込み、ルーツが色濃く出た演奏が印象的です。近年、アヴィシャイ・コーエンのトリヴェニのメンバーとしてもフィーチャーされ、フランスのコミュニティーで注目を集めつつあるイスラエル人ベーシスト、ヨニ・ゼルニクと、シンガー、エリザベス・コントマヌーのご子息としても注目を集めるドナルド・コントマヌーとのトリオ。決して派手ではないものの、若くして匠の風合いを感じさせる作品。将来のトリオの成熟ぶりも予感させる演奏です。

Yonathan Avishai - piano
Yoni Zelnik - bass
Donald Kontomanou - drums

 

 

 

タグ : ジャズ・ピアノ

掲載: 2015年07月06日 16:49