インタビュー

Jim O'Rourke

思いもかけぬポップな変身ぶりで聴く者を驚かせた『Eureka』から3年。フラリと登場した『Insignificance』ではロックンローラーという衣装を新たに身につけたジム。して、そのココロは、とりあえず自分が楽しめること!!

 『Insignificance』〈インシグニフィカンス〉……えいやっ、と英和辞書を紐解けば、そこには〈取るに足らない〉〈つまらない〉といった意味が並んでいる。 とは言うものの、彼──つまり、ジム・オルークが取るに足らないレコードを作ったことなんてあったっけ?
 たとえば98年の『Bad Timing』。そこで聴かせたジョン・フェイヒィばりのフィンガー・ピッキング。 そこにヴァン・ダイク・パークスを思わせるブラス・アレンジをチャールズ・アイヴスのようにコラージュしてみせてくれていたし、 そして、99年の『Eureka』は、いくつものトラックによる音のつづれ織りが、朴訥とした歌い口とソフト・ロック加工のサウンド・メイキングの下、 見事なピンク色の淡い花を咲かせていた。

さて、そして待ちに待ったニュー・アルバム『Insignificance』。 こりゃ早速、と、セットすれば、豪放な8ビートと荒削りなディストーション・ギターのリフ・ワーク。 ムム……。いやいや、あなたは別に、かけるディスクを間違えたわけじゃない。 もちろんプレス工場の人が、隣のラインに並ぶ70年代ロック傑作選かなにかの復刻CDと取り違えたわけでもない。 耳を澄ますまでもなく、バンドに比してけっして出しゃばることのない歌声や、一気に視界が広がっていくような展開部のアレンジに到達。 ああ、これはやはりミスター・オルークの仕業。そしてまた、彼の音楽に耳を浸す幸せな日々が続くのだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月18日 17:00

更新: 2003年03月07日 18:56

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/福田 教雄