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インタビュー

Jim O'Rourke(3)

一歩はみ出せる人が好きなんだ

 この2年間。彼はやはり数時間の睡眠だけで、文字通りハイパー・アクティヴな活動を続けてきた。 その結果、たとえば僕たちは、彼のクレジットをソニック・ユースのアルバム『NYC Ghosts & Flowers』で発見するだけじゃなく、 その激しくロックする姿を、同バンドのステージ上で目撃することにもなった。

 「彼らとは1年間ワールド・ツアーをいっしょに回って、僕は毎晩エレキ・ギターを弾いてた。 それまでは何年かアコースティックしか弾いてなかったから、久しぶりに毎晩エレキ・ギターを弾いて、慣れたっていうのはあるよね。 彼らの音楽に影響を受けたというより、エレキ・ギターを弾く楽しさにふたたび目覚めたって感じ。 今回の曲も、多くの部分がエレキならではの曲作りになってるよ。 もちろん、全体としてはアコースティックとのミックスなんだけどね」。

と、こんなあっさりした答えも彼らしい。 ということは、つまり〈ロック・ミュージック〉への思い入れみたいなものも……。

 「ぜんぜんナシ。僕は単純におもしろいもの、良いものが好きなんだ。で、何がおもしろいかって言えば、それはパーソナリティーであり、キャラクターであり、意外性だからね。 僕は自分がやっていることから、一歩はみ出せる人が好きなんだよ。 それはスタイルとは関係ないんだ。スタイルにこだわる人も多いじゃない?僕にはさっぱり解らないんだよね。……ロックする時の僕なりのルール?(苦笑) ずっと不似合いだと思ってたんだよね、ロックするなんてことは。そんなに外向的な人間じゃないし、派手でもないし。 気をつけるとしたら、自分であり続けることだよね。自分の好きなものを真似するんじゃなく、自分自身であろうとすること」。

 ロックをやりそうにない人がロックをやる。 うららかなポップ・チューンに陰鬱な歌詞を乗せる。 もしくは、女の子がウットリするような音楽に、ギョッとして手に取るのをためらうような絵をジャケットに使用する。 彼がやってきた音楽──フリー・ミュージック、インプロヴィゼーション、ドローン、アメリカーナ、ポップ、ロック、ラップトップ── それらがすべて、その変遷も含めて彼が自身に忠実であろうとしてきた結果だとすると、彼の唯一無比のおもしろさがそこに見えてくるだろう。

 「ニュー・アルバムは一聴シンプルかもしれないけど、一種のだまし絵なんだよね。 前のアルバムより、むしろ込み入ったものなんだ。ぱっと聴いた感じと本質とが、逆なものを作るのがおもしろいんだよ。 屈折した本質をいかにシンプルなサウンドに仕上げるかっていうのも、僕にとってはひとつのチャレンジなんだ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月18日 17:00

更新: 2003年03月07日 18:56

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/福田 教雄