D-Influence
ニュー・アルバムが待たれるD・インフルエンス。
彼らが主催するレーベル=DIの第2弾は才能あふれる
女性ヴォーカリストが 一堂に会したディーヴァ・サロンとなった。
UKソウルが誇る才能集団の現在をお届けしよう!!
正直なことを言うと、純粋なD・インフルエンスとしての純粋な新作を聴きたかった、というのが偽らざる気持ちだった。“Magic”という、90年代有数のレトロ・ディスコ・ブギを収録した傑作アルバム『London』の衝撃から待たされること約4年、課外活動を中心にまとめられた『Master Mixes From The D-Lab』に続く新作もまた企画色の強いモノとなれば、彼らのファンとしては心中複雑なのである。今回の作品集は、タイトルの『D-Vas』が物語るとおり、彼らと近しい間柄の女性シンガーたちがD・インフルエンス・ブランドを纏いながらヴォーカルを披露するというものだ。企画モノがこうして2枚続いたのはもちろんのこと、サラ・アン・ウェッブの存在をグループの筆頭イメージに置いているD・インフルエンスが、なにゆえにわざわざ女性ヴォーカリストを招いてアルバムを作らなければならなかったのか、その経緯も気にかかって仕方がない。そのあたりのことをグループの取りまとめ役であり、UK屈指のセンス・マンであるクワメ・クワテンにぶつけてみることにした。
フレッシュな才能のプレゼンテーション
「偶然にそうなっただけさ。まず、いままであんなにビッグ・アーティストの作品に携わってきたというのに、それを集めた作品がないのは不思議だよね、みたいな話になって、『Master Mixes From The D-Lab』を作ってみたんだ。そして、新鮮な才能を見つけることにかけて俺たちは以前から高い評価を貰っているんだけど、今回の『D-Vas』みたいなショウケース的な作品が新しい才能をプレゼンテーションするいちばんの方法なんだよね。それと、実はね、少し休養したいっていうサラの気持ちを汲んだのも事実なんだけど(笑)」。
思えば、彼らは過去にフリークストリートというレーベルを通じて新人のフックアップに尽力していたことがある。そこを出発点にワーナーからメジャー・デビューしたショーラ・アーマは、彼らに発掘された一人だ。そのショーラ・アーマや、ロミーナ・ジョンソン、そしてDC・リーなど、すでにエスタブリッシュされたシンガーも何人か含まれているが、クワメの言葉どおり、本作が新人お披露目の場として機能しているのは事実だ。となれば、彼らが現在目をかけ、このアルバムへのフィーチャーを決めた新鋭たちについて紹介をしてもらわねばなるまい。
「最初はベル・モンテネグロかな。彼女は僕の結婚式の時に会場でウェイトレスをやっていたんだよね。自分から<私は歌える>と話し掛けてくるもんだから、一度試しに歌ってもらったら、これが素晴らしいのなんのって!」。
まさにD・インフルエンス・マジックとでも言えそうな、粋なプレ80'sグルーヴ満開の“All I Need”と、可憐な曲調のバラッド“Angel”を歌うそのベル・モンテネグロは、透明感のある歌声と儚げな歌いまわしが一度聴いただけでも耳にこびりつく。確かに<味のある>歌い手だ。その出会いのきっかけがハプニングっぽくておもしろいが、このベル嬢のみならず、ほかのニュー・フェイスたちも、あくまでクワメの日常的な音楽生活のなかで彼の興味を奪った、等しくノドに自信のあって自己アピールに長けた人たちばかりのようだ。たとえば……。
「ダイアナ・フェロン(オーガニックなゆったりとしたリズムが浮遊感を生む“I Wanna Get To Know Ya”とUS仕様の洒落たバウンス曲“What Ya Gonna Do”の2曲を披露)は、もともとソングライターとしてD・インフルエンス・プロダクションと契約していた女性なんだけど、歌ってもらったらこれがまた格別だったんだ。そしたらギャラクシー(マニア筋にも高い人気を誇る80年代に活躍した個性派バンド)のフィル・フェロンの姪っ子だっていうじゃない! ビックリさ。ルイーズ・ローズ(アルバム内ではポップ度高めなミディアム“32 Flavours”を好演)はプレシャスというグループにいたんだけど、歌を聴いて、本当に素晴らしいと思った。ちょうどグループが解散したというので、誘ってみたんだよ。うちのプロダクション所属という意味なら、ジュリー・アン・エヴァンス(シャーデー系のやるせない歌声が郷愁を誘う“Dreams”を披露)もそうさ。彼女はオーストラリアのシンガーでね。身内のような存在でありながらも、俺たちの熱狂的ファンだってことを熱弁して憚らないんだ。だって<私のプロデュースを1曲だけお願い!>って、メルボルンからわざわざ飛んできちゃうぐらいなんだから(笑)」。
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