インタビュー

D-Influence(2)

愛のあるプロデューサー・マインド

 彼の発言から察するに、細かいプランなどは二の次で、まずは身の周りにいる才女たちのパフォームを一刻でも早く録音物として世に届けようとする衝動に突き動かされたプロジェクトが今回の『D-Vas』であるように感じられた。そんな愛情ある彼のプロデューサー・マインドは彼女たちの<初めの一歩>がどれもハイ・クォリティーな楽曲で守り立てられている点にもあらわれている。いい曲に恵まれているのは新人だけではなく、オリジナル・D・インフルエンス(むろんリードはサラ)による“Show Me Love”、ショーラ・アーマのとてつもなく甘いヴォーカルに撫でられるような“This I Promise U”、モータウン産の80'sクラシック、フィリス・セイント・ジェイムスの“Ain't No Turnin' Back”を思わせるロミーナ・ジョンソンの“Taste Of Bitter Love”、さらに、ピーク時のCJ・マッキントッシュ的なソリッドなビートとメリハリのあるアレンジが気持ちのいいDC・リーの“La Dee Dah”と、どれも仕上がりは秀逸としか言いようがない。後半に集まった2ステップのミックスにほんの少々力みが感じられはするものの、収録曲は軒並みを印象付けるに十分だ。

となると、企画色の強いアルバム云々で一端は不満を覚えた自分が妙に損をしていたような気がする。加えて、アルバム全体を見渡すと、クワメの好むヴォーカリストの方向性のようなものがなんとなく見えてくる。おもしろいのは、サラのようにスピリチュアルに歌い込むヴォーカリストがほかには見当たらないこと。もしやクワメはサラにできないことをほかのシンガーに託したのでは?という見方もできなくはないが、サラの“Show Me Love”を聴けば、彼女がどれだけD・インフルエンスにとってスペシャルな存在であるかは明快である。逆にこういうアルバムの中だからこそ、彼女の魅力が引き立っている面も確実にあるのだ。だからといって、もっと彼女の声が聴きたかったなんてことを言うと、話が元に戻ってしまいますね。

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掲載: 2002年05月09日 23:00

更新: 2003年03月07日 16:26

ソース: 『bounce』 228号(2001/12/25)

文/JAM