Buffalo Daughter
長いブランク、時代の変化を経て生まれてきたニュー・アルバム『I』。ロックのダイナミズム、斬新なサウンド、しかし、聞こえてくるのはそれだけ? 眩しい光が見える?……われわれの価値観が問われる傑作アルバムだ!
この原稿を書くのになんとか間にあったBuffalo Daughterの新しいCD、それを運んできてくれた宅急便のおじさんは伝票の品目の覧を一瞥、玄関で彼を迎えた僕に訊いたね、
「Buffalo Daughterってなんだい?」(その伝票には〈Buffalo Daughter〉としか書き込まれてなかった)。
「なんかの部品?」。
僕はサインをしながら答えたさ、
「いやいやバンド」。
「ふん?」。
「ロック・バンドです。はい、お世話さま!」。
TVでは、コマーシャルのジェニー・ホルツァーみたいなネオンが、〈NO MORE IMAGE〉って言ってる。ノー、モア、イメージ。これは気が利いたメッセージ? じゃない? ニュースでは、ラモーンズが〈ロック・ロック、ロッカウェイ・ビーチ〉と唄ったところからきっと近く……飛行機が落ちたと伝えてる。そして、アフガンでは北部同盟がカブールを制圧、市民は快哉を叫び、ヒゲを剃り、禁じられてた音楽を聴き、ブラウン管から陽気に笑顔を溢れさせてる。警察隊の兵士が、ライフルの銃口に花を差し込んでる。僕も、どうしたわけか嬉しくなって目がうるんだのだけれども、でも、このニュース、ほんとうに朗報? ……「ロック・バンドです」。ロックってなんだ。
テロから以降、TVでかかっているような音楽のほとんどが、バカバカしく感じられる。僕だけだったらいいんだけどな、そう思えるのは。じゃない? なら、僕らが大事に抱えてるロックって、さ!僕らはせっせと消費する。ロックは、ビールやハンバーガーの新しい銘柄とか、そう、アロマ・オイルやなんかと大差ない? ロックも商品。
ロックになにができる? ロックはテロに噛みつく? ロックは世界を変える? 「変えなくたっていいんだ」。じゃあなぜ〈変えられる〉って顔をしてる? みんなで大声で歌おう、「ロックは世界を変えません!」。ジョン・レノンを殺せ。
……大昔のティーンエイジャーみたいだ。そうさ! もっと、さっぱりした書き方をしてみたいもんだけれどもね、そうはいかない。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2002年05月16日 13:00
更新: 2003年03月06日 20:25
ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)
文/村松 タカヒロ