インタビュー

シーンを支えるドラムンベース同期生との同機性

 90年代初頭、UKのアンダーグラウンドから生まれた ブレイクビーツ・ミュージックの発展形であるドラムンベース(以下D&B)は、 さまざまな音楽的要素を吸収することで、常にそのフォーミュラを変化させ進化 を遂げてきた。その中でエポックとなった4ヒーローの『Parallel Universe』が リリースされて7年が経ったいま、各々のプロデューサーたちはそれぞれの方向性 へ向けて帆を立て、ブレイクビート・サイエンスの旅へ発とうとしている。

 たとえば、2000年にリリースされたLTJブケムの『Journey Inwards』は、 自身のルーツを反映させ、D&Bのフォーミュラにとらわれないダウン/ ミッド・テンポのトラックから、彼の敬愛する70年代ソウルやジャズの エッセンスまでを見事に昇華したアルバムだった。また、ブケムと同じく70 年代のヴァイブを吸収したサウンドを得意とするアダムFの最新作は、これまでの 叙情的な作風から転換して、レッドマンやLLクールJらUSのMCたちを起用し、 ヒップホップ色の強いアプローチで驚かせてくれたばかり。

 また、独特の間を活 かしたストイックな世界を演出するフォーテックは、アルバム『Solaris』で ミッド・テンポのトラックを中心にハウス寄りの曲を披露している。一方、 ダンス・ミュージック界はおろか、各方面からその動向を注目されている ロニ・サイズは、自身を中心とするプロジェクト=レプラゼントでD&Bの フォーマットに留まりながら、旺盛な探求心とズバ抜けたアイデアでそれを超越 したハイブリッドなサウンドをクリエイト。ヒップホップの要素と ジャングル・ライクのスリリングなビーツで人気のハイプとジンクはガラージ& ブレイクビーツのシーンでもヒットを連発している。ロニとハイプたちはD&B 以降の要素が強いともいえるが、表面上のスタイルこそ違えどD&Bの メンタリティーがそれぞれに息づいているのは間違いない。アーティスト各人 にとってはすべてがD&Bであり、広い意味でのソウルなのかもしれない。


テック9『It's Not What You Think It Is!?!!』(SSR Crammed)


『Music Box』(Full Cycle)


エンフォーサーズ・プロジェクト『Above The Law』


アダムF『Colours』(F-Jams/Positiva)


『Logical Progressions』(Good Looking)


『Wayz Of The Dragon』(Dope Dragon/Full Cycle)


アルコン2『Liquid Earth』(Reinforced)


フォーテック『Modus Operandi』(Science/Virgin)


『Earth, Volume One』(Earth/Good Looking)


テック9『Simply』(SSR Crammed/Reinforced


MJコール『Sincere』(Talkin' Loud)


『Playaz 4 Real』(True Playaz)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月30日 17:00

更新: 2003年03月03日 22:03

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/青木 正之