インタビュー

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1%を増やすことが大事

――あなたの音楽は子供向けではないですよね? だけど、この国の音楽のほとんどは子供向けに作られている。子供向けに音楽を作ったことはありますか?

「ないけど、子供が生まれてから、彼の存在っていうのがすごい人間として激しくあるから、子供の世界への意識はすごい増えていて、ただ、じゃあ(子供に)向けているかっていうと違う。彼もいつか大人になるっていう意味では向けているけど。子供っていうのはもっとプリミティヴなもので感動するわけで、概念的じゃないでしょ。(自分の音楽は)そういう音楽ではないね」

――はっきりとすぐに意味がわかってしまうアートというのは、あまりおもしろくないですか?

「意味……アートっていうものに意味があるとは思わない。すごくそういう意図があるものはアートだとは思わない。コンセプチュアル・アートは大好きだけど、それとはちょっと違うしね。もちろん、メッセージが込められていることは悪いことじゃないけど、やり方の問題じゃない? 物事をこの時代に作って提示するときに、まったく〈あなた〉っていうことからゼロから作っていることはあり得ないと思うから。当たり前のことも知れないけど。ほとんど、外からの影響によって消化して外に出す、それを自分のオリジナルと呼ぶのは全然構わないけれど、そこに、最後の1%に〈あたし〉っていうものがあるかどうか、そこだと思う。99%がなにかを彷佛させるものはあたしは好きじゃない。それは当たり前なの。なにかから来ているのが簡単に見えるようでは、なんの意味もない。モノに対してのなんのお返しもできていない。そしてさらにその1%を増やすことっていうのがさ、すごい大事だと思うから」

――ちょうどいま僕たちは〈%〉の話をしたけど、よく〈天才は99%の努力と1%の才能からなる〉とか……それについてはどう?

「天才……天才っていうのが、リアルに見たことがなくて、偉大な芸術家は尊敬しているけど、彼らの作品を見ているだけで、彼らに実際に会ったわけではないし、天才っていうものがちゃんと捉えられないな。強靱だと思う人はいる。強靱というのと天才はすごく私の中では近い。魅力的な人はいるけどね」

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年09月26日 12:00

更新: 2003年02月13日 10:58

ソース: 『bounce』 236号(2002/9/25)

文/荏開津 広