壮大な自然を背景に描かれる、UAの初主演映画『水の女』
雨の日になるとこの映画を思い出す。父親とフィアンセを同時に亡くした涼(UA)が謎の男、優作(浅野忠信)と出会うことによって起こるさまざまな出来事が、壮大な自然を背景に描かれる『水の女』。〈水の女〉とはもちろんUA演じる涼のことで、人生のなかでエポックとなる体験をしたとき、決まって雨が降る(降らせる)宿命的雨女として登場する彼女を軸に物語は回る。女優デビューとは思えないくらいの存在感でスクリーンに輝く彼女を通しての自然・宇宙の物語とも言える本作は、とにかく圧倒的な映像体験が楽しめます。浅野やYUKI、小川眞由美などの演技も華を添えるが、〈太陽〉〈雲〉〈月〉など自然にまつわる言葉の多い音楽の作風も関係してか、UAのドキュメント濃度も高い佇まいは目を釘付けにする。実際、ほとんどのシーンはリハーサルすら行われておらず、即時性のスリルと緻密に構築された映像美の両立が、本作のキモに。UA“閃光”がエンディングに流れるころには、雨にまつわるフィルム・ノワールの心地良い余韻に浸っているはずです。
映画「水の女」
2002年/日本 監督・脚本・編集/杉森秀則 出演/UA、浅野忠信、HIKARU、小川眞由美他 10月より東京・シネマライズにて公開後、順次全国公開予定(配給/日活)
- 前の記事: UA(4)
- 次の記事: 時代とともに見るUAの銀盤たち