UA(4)
歌ってても後ろが向けない自分だった
――ジャズが他の音楽と比較して最も優れている点はどこでしょうか?
「あんまり、ジャンルで呼ぶのが年々好きじゃなくなって。〈私はジャズをやっているのです、これがジャズです〉とかっていうのって、すごい可能性がない。古き良き音楽も愛しているけどね」
――バンドというのは好きですか?
「バンドは好きです」
――もし、そうなら、それはあなたが社交的な性格だから? それともその逆?
「とても逆であって、そして自分が音楽の世界にいるということにずっとなにかそぐわなく感じてきていた。で、一生懸命、音楽のところにいる自分っていうものを生かしていこうとしていたけれど、本当にこの1年あたりで気が付いて、私は〈音楽です〉っていうこととは違うと思った。そのとき、とても楽になった。もちろん、多くの人に伝えるときには〈歌手なんです、コンサートをやっているんです〉と言うんだけど。AJICOというバンドを経験したり、映画に出たこともすごい大きかったけど。ようするにすごい怖いよね。わからないから。見えないから、コミュニケートのときに。いつもそれがあって。固定のバンドがなくて、歌ってても後ろを振り向けない自分だった。それがどんどん楽になってきて、この1、2年でそのこと自体が好きになった。いまは、自分が音楽を作るときにはバンドが最適なやり方であって、ただそれがどんなバンドでもいいかっていうとそうじゃなくて、あの、いまのメンバーが好きなんです」
──そういった一方で、レイ・ハラカミさんともコラボレートしていて。けど、テクノとかはあまり好きじゃないって話を聞いたけど?
「夜のサウンドがね、陰陽でいったら、陰のほうは自分のなかにあるから、そういうサウンドはいらなくて、(レイ・ハラカミのサウンドは)昼……朝日やん?」
UAと話すことは彼女の音楽を聴くことと同じように刺激的な体験である。もっとユーモラスなUAもいたし、美について真摯に語るUAもそのときにいた。しかし、ここではまず彼女の『泥棒』を聴いてもらいたい、と書いて僕は退場することとしよう。彼女が希有であるように、この作品も希有である。
──すてきな女よ/私のいのちよ/おまえのために/たくさんの男が迷った――(アンソニー・バージェス)。
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