インタビュー

Craig David(2)

僕は本当にラッキーだよ

今回の『Slicker Than Your Average』は、ほぼ全編がいわゆるR&B風だった前作に比べ、サウンドの幅からヴォーカルまで、あらゆる面で彼の成長が聴いてとれる。

「そう思ってくれたら嬉しいな。みんなに〈よりスケール感を増して戻ってきてくれた〉と思ってもらえるような作品にしたかったから。『Born To Do It』に通じる部分も多いけど、今回はよりソリッドなサウンドで、よりクールだと思う。エッジの効いたクラブ・サウンドも前より多いよね。同時に、自身の感情を表に出したパーソナルな曲も入れたし、歌詞とヴォーカル・スタイルの面でも進歩したと思うよ」。

落ち着いてそう語るクレイグは、弱冠21歳にして世界的な成功を収めつつある状況にも方向性を見失うことはなかったようだ。

「ときどき第三者的な視点から〈クレイグ・デヴィッド〉についての歌詞を書くのも、成功に浸りきらず自分を客観的に見つめたいからなんだ。もし僕が誰かをインタヴューした時に、そいつが〈俺はアルバムの売上が700万枚、賞も数々受賞して……〉みたいなエゴの塊だったら耐えられないからね(笑)。僕は公営団地で育ったから、得られるお金や世界中を廻れることの有り難さは身に染みてわかっている。自分は本当にラッキーだと思っているよ」。

……泣けるほど優等生ですな。マジメなクレイグ君らしく、前作の全米プロモーション中にシコシコ曲を書きためてニュー・アルバムに備えていたそう。その最中にも、ビヨンセやミッシー・エリオットらが彼のショウに足を運び、P・ディディからはなんとプロデュースの申し出もあったとか。にも関わらず、『Slicker Than Your Average』がUKのプロデューサーを中心に作られているのは、地に足の着いたクレイグらしさというべきか。

「パフィは尊敬している人物のひとりだけど、今回は時期尚早のような気がしたんだ。機が熟せば彼やジャーメイン・デュプリともいっしょにやってみたいと思っているよ。アッシャーには〈デュエットする時にはJDにビートを任せてさぁ、2人で思いっきりやろうゼ!〉って言われてて、〈いいね。いつか絶対にな!〉って返事してる。いまはまだ、みんなに僕個人をもっと知ってもらう時期だし、大物との仕事はそれからさ。それに今回はUKに戻っても素晴らしいアルバムが作れることを証明したかったんだ」。

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掲載: 2002年12月05日 12:00

更新: 2003年02月13日 12:04

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/高橋 玲子