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インタビュー

Craig David(3)

2ステップを忘れたことなんかない

リスナーの嗜好に応じていろいろな光を放つ『Slicker Than Your Average』のなかでも、とくに強力なのは大人気の先行シングル“What's Your Flava?”だろう。さっそく魂抜かれまくりですが……閑話休題。本曲は、“Walking Away”のリミックスも手掛けていたイグノランツによる80'sファンク風トラックに、クレイグ節が炸裂するスムースなヴォーカルがなんとも艶っぽく、US市場も十分狙える好作だ。

「イグノランツはハングリーで可能性があると思ったから、〈今度いっしょにやろう〉って言ってあった。USモノの影響も確実に受けていつつ、UK独特の感覚も持っているから、ユニークなサウンドだろ? 僕にはそれが凄く重要だった。“What's Your Flava?”は、いろんなタイプの女の子をアイスクリームに喩えて、お高くとまっている子に〈確かにキミは美味しいのかもしれないけど、人それぞれ好みは違うんだよ!〉って言ってるんだ。自分のお気に入りを見つけないとね。個人的にはクッキー入りじゃないとダメだけど(笑)」。

お願いだから太るなよ!と余計な心配しつつ、今作では4曲プロデュースで参加した盟友マーク・ヒルについても訊いてみた。

「実際はもっとやったんだけどね。とくにスパニッシュ風の“Hidden Agenda”は、マークの真骨頂だよ。お互いの進化が出ていて、僕もちょっと思い入れが強すぎるぐらい大好きな曲さ。でも、自分を追い込む必要性も感じたから、他の人を起用して新たな自分を引き出そうとしたんだ」。

本作を聴いて2ステップ/UKガラージの枠を〈超えた〉と評する人もいるかも知れないが、実際にはストリーツらと同様、フリーフォームなブレイクビーツ・サウンドに進化した2002年型のUKガラージ風味はしっかりと存在している。もちろんそれは比べようもなくポップなのだが。

「そう感じてくれたら嬉しいな。確かにUKガラージ的な要素は前よりも増えているしね。“Eeni Meenie”には、UKガラージやR&B、ヒップホップといった要素が詰まっているし、“2 Steps Back”はメロディアスで懐かしいタイプの2ステップで〈この2年半に変化があったかもしれないけど、僕は2ステップが好きなんだ〉っていうメッセージなんだよ。R&B寄りのサウンドも多いけど、UKガラージのおかげでいまの僕があるわけだし、そんな大切なものを忘れたことなんか一度もないんだ。ただジャンルに囚われず曲を書きたかっただけさ」。

ジャンルに囚われない――スティングの“Shape Of My Heart”をネタに本人とデュエットした“Rise And Fall”が象徴的だが、一方でクレイグは“Fill Me In”のような歌詞が共感を呼び、ティーネイジャーのセックス・シンボルとしても人気急上昇中だ。

「“Personal”は、親に隠れてコソコソやってた“Fill Me In”の続きで……今回は彼女の両親と夕食の席に着いてる段階なんだけど、いざヤリたくなっても今回は彼女の親が下の部屋にいる、っていう状況なんだ」。

今回も靴持って窓から逃げたりするんでしょうか。ところで、実は“World Filled With Love”は実際彼がNY滞在中に遭遇した〈9.11〉にインスパイアされた曲。強調することでUSウケを狙うこともできたはずだけど?

「自分自身のスタイルを持って、オリジナリティーを出すことが大切だからね。何と言われようと自分らしさを見失っちゃだめさ」。

その言葉どおりの自分自身を貫いたクレイグ・デヴィッド。〈Slicker Than Your Average〉とは、言い得て妙だ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年12月05日 12:00

更新: 2003年02月13日 12:04

ソース: 『bounce』 238号(2002/11/25)

文/高橋 玲子