OutKast(2)
根底にはファンクがある
整理しておく。ボーイ主導の〈Speakerboxxx〉はゲストMCらを招きつつ、実にソウルフル&ファンキーに仕上げられたヴィンテージな逸品。アンドレもプロデューサーとして数曲に関与している。ひとくちに〈ソウルフル〉とか書いたが、件の“Ghettomusick”が突出したものに聴こえない……と補足すれば、その内容の凄さも推して知るべし。みずから「Pファンクの影響は大アリだよ。他にもボブ・マーリー、アレサ・フランクリン、ゲトー・ボーイズ、スティング、ケイト・ブッシュは大好き。ファンキーだったら何でもいいんだ。スー・スー・ススーディオ♪
フィル・コリンズ、ビリー・アイドル、何でも聴くよ」と語るボーイの嗜好がよく現れた一枚だ。
「表面的にはどんなことをやっていても根底にはファンクがある、っていうのかな。それに、説教じみたことを言う必要はないけど、何らかの形で自分の言いたいことを表現することは大切だと思ってるよ。“Church”はドレがプロデュースしたんだけど、世界中で戦争とか悪いことがいろいろ起きていて混沌とした状態の現在、救いになるのは音楽だけだっていう気持ちでやった曲だよ。どんな宗教を信じるかなんていうのはどうでもいいこと。崇高なパワーと交信することによって、自分がどうしたらいいかという解決になるかもしれない。そういう目的でこの曲をやったんだ」(ボーイ)。
一方、アンドレ側の〈The Love Below〉は、全曲がセルフ・プロデュース……というよりは〈自作自演〉という言葉が似合う、言ってしまえばプリンスやベックを思わせる手触りが不思議で心地良い一枚だ。「声を聴いて惚れこんじゃった」というノラ・ジョーンズなど、最小限のゲスト起用も意表を突くものだし、主役のアンドレに至ってはほとんどラップせず、歌っているのだ。
「アウトキャストの音楽って、〈予測できないおもしろさ〉だと思ってる。いつも違うんだ。俺のサイドではラヴ・バラードをやってたり、ジャズやオーケストラ、その時の気分によって音楽がころころ変わる。ただ、無意識だけど、バラードとかスロウな曲をやってても、ジャズやファンクの影響がどうしても反映されちゃう。音楽って理屈じゃなくて、身体で感じるものだろ。ギタリストにもその人独自の弾き方ってのがあるし、それは変えようと思って変えられるものじゃない。俺の根底にも、常にファンクが流れているんだと思う。ファンクはフィーリングなんだ」(アンドレ)。
結果として、今回はセルフ・プロデュース度がいままででもっとも高く、いままで以上に個々のパーソナリティーが明確に見えるアルバムとなった。しかしながら、今作の後アウトキャストとしての活動はしばらくお休みとのこと。ただ、ボーイは自分たちのレーベル=アケミナイの運営などに大忙しのようだし、アンドレも「この先どこまで音楽をやっていくかさえわからない」と天才肌らしいムラッ気を見せつつ、さまざまなプランがある様子。活動休止? いいんじゃないの。また2人が何かやらかしてくれるまで、この2枚のアルバムは十分もちます。
(協力/blast)
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