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インタビュー

アンドレ3000の奔放な感性が火を噴いた〈The Love Below〉

〈The Love Below〉を聴くに、アンドレの趣味は凄くわかりやすい。まずは、ボーイ盤同様Pファンク色が濃厚……なのだが、あちらが整合感のあるコーラスとタイトなアレンジを備えたパーラメントだとしたら、ギターもバリバリに轟くアンドレの感性はまさにファンカデリック。そのセンスはジミ・ヘンドリクスにも通じるもので、何とアンドレは現在ヒューズ兄弟とジミの映画を撮っていて、ジミ役を演じるのだとか(ファッション面での影響も大きいし)。で、そこからも連想できるのがプリンス。ピッチを操作した歌のサイケ感やダイナミックな箱庭感を備えた空間処理はまさに80年代半ばの殿下譲り。ベックにも近いものを感じる……とはいえ、90年代っぽい〈編集感覚〉をアンドレは持っておらず、もっと天衣無縫で天然な感じがする。また、実験精神とポップ性を折衷するビートルズのトライはアンドレにも不思議と共通する部分が大きい。恐らくアンドレは幅広いジャンルの音楽に精通しているわけじゃないのだろうが、それこそが彼の強みだろう。ロニ・サイズなどのドラムンベースにショックを受けて突発的に“B.O.B.”を作ってしまう可愛い人なわけで、今後どのようなサウンドを送り出してくるのか本当に予想がつかないのだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月09日 18:00

更新: 2003年10月30日 13:51

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/出嶌 孝次