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インタビュー

ビッグ・ボーイがサザン・ヒップホップの極みを見せた〈Speakerboxxx〉

 なんの躊躇いもなく、自分たちの感性に従順に音楽を創造し続ける、それがアウトキャストである。新作のうちビッグ・ボーイが主導した〈Speakerboxxx〉側は、従来のアウトキャストの音楽が発展/進化していく様子がまたも確認できる内容だ。宇宙空間に大気圏内のファンクを解き放つような世界観は、Pファンクとも共通するところである。Pに限らず、ホーンの挿入の仕方なんかもいちいち70年代ソウルやファンク~マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドらの影響を感じさせるが、彼らはそれを現代のヒップホップとして提示する。そして、彼らの音楽が決定的にNYやLA産のそれと違うのは、生音的な響きから感じられる情緒性や土着的な黒人音楽の温もりに溢れているところだ。そういった点はフィールド・モブら昨今の南部産ヒップホップとも共通するが、むしろアウトキャストこそがそうしたアプローチをいち早く披露したパイオニアなのである。一地域性だけでなく、大きな括りとしての〈南部〉ヒップホップが持つ豊かな感覚をベーシックに保ちながら、彼らは常に最新のスタイルを提示する。過去にスピーカーから流れ続けてきたすべての音楽を包括し、アウトキャウトの音楽は、スピーカーから流れ続ける。スピーカーから流れてきた音楽を繋げると、時代はひとつの線で結ばれるのだ。


マーヴィン・ゲイ『Here My Dear』(Motown)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年10月09日 18:00

更新: 2003年10月30日 13:51

ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)

文/高橋 荒太郎