インタビュー

Blink 182(2)

作り込まれた(?)パンク・アルバム

「昔はパンク以外はまるで聴かなかったんだよ。ただ単に速い曲が好きだったからなんだけどね。だから自分たちでもそういう音楽をやってきた。でも何年か経つと俺たちと似たようなバンドがたくさん出てきて、気付いたんだ。俺たちも彼らとぜんぜん変わらないってことをね。でも今って、いい音楽はいい音楽なんだってみんなが理解している。だから、ヒップホップとかエレクトロニック・ビーツとか、そういうエッセンスがパンク・ロックの曲に入ってても抵抗がないんじゃないかと思うんだ。新しいものを採り入れるのは実は簡単なことなんだよ。大切なのは、これらを活かしながらいかに良い歌詞を書けるか、いかに良いコーラスができるかってことなんだ」(トム)。

「アルバムを作る際になって、今まで聴いたことのないものを作ろうってことになったんだ。過去に自分たちがやってきた、みんなが期待してるようなものを作るんじゃなくてね。それで実験的なビートをやろうってことになったんだ。パンク・ロックのビートのお決まりパターンじゃなくってさ。1曲録るのに4パターンの違うドラムを録ったりしてみた。つまりビートで実験をしたのさ。パンク・ロックでそういうことをやる人って他にいないと思うんだ」(トラヴィス・バーカー、ドラムス)。

 ブリンクのキャッチーなサウンドにパワフルで大きなグルーヴのドラム・サウンドを持ち込んだトラヴィスの発言は非常に興味深い。バンドの中でもっともバッドボーイ・パンクス・キャラの彼は、音楽的には、それこそジョン・コルトレーンからパンク/ハードコア、スラッシュ・メタル、フガジやクイックサンド、さらにはヒップホップに至るまでの幅広い嗜好を持っていて、引き出しも当然多い。そのトラヴィスが今回はビートに凝りまくったのだ。先行シングルの“Feeling This”なんて、ドラムンベースを意識したビートをすべて生のドラムで叩き、それを何度もループしながら形にしていった曲だ。

「このアルバムのほとんどの曲はビッグ“ジョン・ボーナム”ドラムだね。ドラムマシーンを使うんじゃなく、生のリアルなサウンドをゲットしろってことさ。ドラムマシーンが発明される元となったサウンドをね。マイクロフォンを使って自分たちだけで音を出そうぜってことでやったんだ」(トラヴィス)。

“Easy Target”のようなストレートに聴こえる曲でさえ、ドラム録りのパートをすべて分けて録ることによって、まるで打ち込みパンク・ロックのようなサウンドに仕上げている。ここには、トラヴィスが参加した、ランシドのティム・アームストロングによるプロジェクト、トランスプランツでの経験も大きく活かされていると思う。そんな実験性溢れるサウンドにも関わらず、ブリンクのスゴさというのは、フックと素晴らしいメロディーを持った、お馴染み〈ブリンク節〉の楽曲に仕上げてしまうところではないだろうか。

「それこそが俺たちらしさなんだ。俺たちはメロディーが大好きだし、一緒に歌える曲が大好きなんだ。だから、サウンド的な部分ではなるべく変わったことをやったんだけど、そこには必ず俺たちらしいメロディーを見い出すことができる。だからこそリスナーにとっても理解しやすいだろうし、俺たちと一緒に音楽の旅に出ることができるってわけさ」(トム)。

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掲載: 2003年12月04日 17:00

更新: 2003年12月04日 18:32

ソース: 『bounce』 249号(2003/11/25)

文/大野 俊也