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インタビュー

Blink 182(3)

彼らは大充実期を迎えている!!

 それにしても、このアルバムは1曲1曲が異なるアイデア、異なるアプローチで、まったく異なる表情を持った曲となって形になっている。生ドラムによるエレクトロニック・ミュージック的アプローチ、ゴシック調のダークな80'sニューウェイヴ的アプローチ、加えて、トラヴィス、トムのプロジェクトであるボックス・カー・レーサーでの経験が影響したであろうシリアスでエモーショナルでラウドなサウンドもブリンクの中に消化されている。ここにはジョークたっぷりのカラッと明るくファストでメロディックな、かつてのブリンクのパブリック・イメージはもはやない。

「今回は下半身のこととか歌ってる暇がなかったんだよ(笑)」とトムは冗談ぽく言っていたが、このアルバムには純粋に〈音楽〉を追求し、自分たちの可能性を追求したブリンクの真摯な姿が見てとれる。

「このアルバムは、今まででいちばん時間がかかったけれど、たぶん今まででいちばん作るのが簡単だったアルバムかもしれない。全員が情熱を持って曲作りに関わったし、全員がたくさんのアイデアを持っていたし、バンドとしては今まででいちばんコミュニケーションがうまく取れたレコードかもしれない。今回は可能なかぎり、相当音を探りながら作ったからね」(マーク)。

「今回のレコーディングでさ、また新たにバンドを始めたような気持ちになったよ。自分のいちばん最初のところ、なぜ俺はバンドを始めたのか?っていうことを思い出させてくれた。すべて自分たちでやったんだ。ヤバかったよ。文句ナシだね」(トラヴィス)。

 本作のプロデュースを担当したのは、お馴染みパンク・ロック界の重鎮、ジェリー・フィン。バンドは今年の1月から地元サンディエゴの一軒家を借り切ってレコーディングを開始。当初はDJシャドウ、ネプチューンズとのコラボレーションも噂されていたが、実際にゲスト参加したのは、キュアーのロバート・スミス。ここにも今のブリンクの指向が見てとれる。そして、アルバム・タイトルにはズバリ! 『Blink-182』とセルフ・タイトル。当初はガンズ&ローゼズの作品をちゃかして〈Use Your Erection I And II〉(意味は〈勃起を使え〉)なんてタイトルが発表されていたが、これはすぐにボツとなった。

「誰もがふざけたアホなタイトルを期待しているからさ、〈ファック! ノー・タイトルだ〉ってなったんだ。みんなが予想しそうなことはやりたくないんだ………だからいいアルバムが作れたのかも!(笑)」(トム)。

 このアルバムには、彼らの歌いたいこと、出したい音がハッキリ存在している。ブリンク・182は確実にネクスト・レヴェルにきているのだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年12月04日 17:00

更新: 2003年12月04日 18:32

ソース: 『bounce』 249号(2003/11/25)

文/大野 俊也