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インタビュー

Nelly Furtado

鮮烈なデビューから早3年、高まりすぎた期待のなかでオルタナティヴ・ポップの傑作『Folklore』が登場!! もう〈クロスオーヴァー……〉なんて言ってられないぞ!!


 ネリー・ファータドとは、実に多くの切り口で論じることが可能なアーティストだ。例えば、ここ数年活躍が目覚ましいカナダ人女性という切り口。ユニークな人種的アイデンティティーという切り口。あるいは、単一カテゴリーに収まらないクロスオーヴァー感覚という切り口も大いに有効である。なにしろ西海岸のブリティッシュ・コロンビアに生まれ、TLCやソルトン・ペパなどに憧れつつロックも聴いて育った彼女は、高校卒業後カナダ産ヒップホップの発信地、トロントに移り住み、まずはMCとして活動を始めたという経歴の持ち主なのだから。が、ネリーのクロスオーヴァー力が同世代のなかでもズバ抜けて独創的なのは、その守備範囲が欧米のポップスに留まらない点にある。というのも、ポルトガル出身の両親を持つ彼女は幼い頃からファドなどの伝統音楽に親しみ、ひいてはさまざまなワールド・ミュージックにも造詣が深い。そして音楽表現にも言動にも、複数のカルチャーを内に抱いていることを広く反映させているのだ。

「わたしがそんなふうに育ったのは特に母の影響よ。彼女自身が自分のルーツにすごく誇りを持っていて、しかも故郷では家族代々音楽に深く関わってきたから、子供にも強いアイデンティティー意識を植え付けてくれたわけ。で、4歳の頃からポルトガルのダンスや音楽を習ってきたわ。だから、自分のルーツに誇りを抱きながら自分を取り巻く環境に溶け込む術を学んだわたしは、すごくオープンマインドな人間になれたの。つまり、いろんな人たちと共感しつつも個性を維持できるってことね。それがまさしくわたしの音楽なのよ」。

 従って、彼女が2000年に発表したデビュー・アルバム『Whoa, Nelly!』は、いわばミクスチャー・ポップの極地。ブレイクビーツを主軸としつつも、R&Bにラップ、サンバやボサノヴァのリズム、ポルトガル語の詞、ギター・ロック……と、際限ない異種交配の末に生まれたまったく新しいサウンドだった。その後まもなく同作は英国など欧州各地でブレイクし、2001年には米国を席巻。“I'm Like A Bird”(グラミー最優秀女性ポップ・ヴォーカル賞を受賞)や“Turn Off The Light”といったヒット曲が続出して、最終的に世界で600万枚のセールスを記録するに至った。さらにはミッシー・エリオットの“Get Ur Freak On”のリミックス(映画「トゥームレイダー」のサントラより)への参加やルーツらとの共演で、ヒップホップ界からのリスペクトも獲得するのである。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年01月22日 13:00

更新: 2004年01月22日 17:48

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/新谷 洋子

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