インタビュー

Nelly Furtado(2)

ニュー・アルバム『Folklore』が完成!!

 あれから2年、出産を経て一児の母となった彼女がセカンド・アルバム『Folklore』を完成させて帰ってきた。当初から漠然とフォーク・アルバムを作るアイデアを温めていたというが(「といってもわたしが考えていたのは、シンプルかつモダンな〈ポスト・フォーク〉よ(笑)」)、具体的なインスピレーションを与えてくれたのは、両親の故郷であるアゾレス諸島への旅だったと語る。

「アゾレスはアトランティスの一部だという説があって、すごくマジカルな場所で、行くたびにパワーが湧いてくるわ。当時は曲作りのアイデアが浮かばなくて少々行き詰まっていたんだけど、島である老人を見かけたの。彼は古ぼけた作業着を着て肩に鍬を担いでいた。でもTシャツにはコカ・コーラのロゴが入っていたのよ(笑)」。

 まるで過去と未来の出会いを象徴しているかのようなその姿は心に強く訴えかけ、「〈そっか、わたしはただ自分が知っていることを曲に書けばいいのね〉と急に閃いたの」と、彼女は振り返って言う。そしてネリーが〈知っていること〉と言えば、ヨーロッパからやってきた移民の子としてカナダという新世界で育った経験にほかならなかった。そこで、アゾレス諸島や両親のことに始まり、高校時代の思い出や、25歳になった現在の自分を支えている愛や信条に至るまで、みずからのライフストーリーを詞に綴っていったのである。そのため本作はファーストよりも内省的で、ネリーのシンガー・ソングライター的な側面を強調した作品とも呼べるだろう。

「そういう意味では、より〈カナディアン〉な作品といえるのかも。カナダといえばジョニ・ミッチェルやニール・ヤングみたいにトラッドなシンガー・ソングライターで有名でしょ? 実際、2002年からジョニの作品を聴き始めたから影響を受けているはずよ。それに、前作の時はポジティヴで明るく輝いているような作品をめざしていたし、なにしろ若くてすべてが初体験だったから大いに楽しみたかったの。音のほうも、ヒップホップに根差した自分の音楽的背景を披露する〈ストリート・ポップ〉みたいな感じだった。でも今回は自分のエモーショナルな面を見せてるわ。ここではもっと立体的な人間なのよ(笑)。それが表現できたのは人生経験を積んだせいでもあるし、真実の愛に出会って(ちなみに彼女のパートナーとされているのは、本作にも参加しているDJのリル・ジャズ)必然的に自分の弱さを晒せるようになったことも関係しているわね」。

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掲載: 2004年01月22日 13:00

更新: 2004年01月22日 17:48

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/新谷 洋子

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