インタビュー

Gnarls Barkley

マジか、冗談か、狂気か、正気か。世界を揺るがす2006年最大の新人アクト、ナールズ・バークレー。その正体は誰も知らない……ということでヨロシクね!!

ひとりで相手したくないヤツ


「アイツはあまりチャートのことは気にしてないみたいだよ。良く言えばエキセントリック、悪く言えば世間のことをこれっぽっちも気にかけない浮世離れしたヤツなのさ(笑)」(デンジャー・マウス:以下同)。

 デビュー・シングル“Crazy”がダウンロードだけで全英シングル・チャート1位を獲得したナールズ・バークレーだが、その仕掛人は爆発的な成功をまるで他人事のように語る。いや失礼。実際にデンジャー・マウス自身が他人だと言い張るのだから、少しもおかしなことではなかった。同曲のスマッシュ・ヒットで彗星のように登場したナールズ・バークレーは、ゴリラズをプロデュースして一気に名を上げたデンジャー・マウスと、アトランタが生んだ最高のソウル・マシーンことシー・ローによるユニット、ではないのだそうだ。

「ああ、俺はナールズ・バークレーじゃないよ。絶対にね! ナールズのサウンドに俺とシー・ローが手を貸している、という感じかなあ」。

 インタヴューしていただいた通訳さんの話によると、とてもウソを付いているようには思えなかったそうだ……が、じゃあデンジャー・マウスは、ナールズ・バークレーの存在をどのようにして知ったのだろうか。

「彼について深く知ることになったのは、2年半ほど前、俺とシー・ローがコラボを始めた頃だね。実は俺もシー・ローもナールズのことを知っていたから、共通の友人ってことで俺たちのレコーディングにヤツも顔を出すようになったのさ」。

 なお、シー・ローとデンジャー・マウスのそもそもの出会いは、デンジャー・マウス&ジェミナイ名義のアルバム『Ghetto Pop Life』制作時だという。シー・ローはそこで“What U Sittin On?(DM's 26" Remix)”にフィーチャーされていた。

「それが約2年半前なんだけど、同じ頃にちょうどドゥームとのコラボを始めていたんだ。つまり、ドゥームやシー・ローと組みはじめて、それからすぐに(ビートルズの〈White Album〉とジェイ・Zの『The Black Album』をマッシュアップした)『The Grey Album』を作ったんだ。その後すぐにゴリラズに関わったから、ドゥームやシー・ローとやったアルバムの完成が少し遅れてしまったんだ。ちなみにデーモン(・アルバーン)はナールズ・バークレーじゃないからね。その噂はここで打ち消しておくよ」。

 いや、誰もそんな噂は立てていないのだが……そのデーモンがコントロールするヴァーチャル・バンドのゴリラズやナールズのように、彼は実体の見えない人たちと関わることが多いようだ。

「俺としては、そっちのほうが楽なんだよね。たまに仕事をするだけで、ふだん近くにはいないからさ。ゴリラズもナールズもかなりエキセントリックなヤツらでさ、日常レヴェルで付き合うには辛いものがあるしね(笑)。それに、俺ひとりでヤツらと絡んでるわけじゃないから助かってる。ゴリラズの時はデーモン、ナールズの時はシー・ローがいるから、俺ひとりで相手しなくて済むのはイイよね(笑)」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年07月06日 23:00

ソース: 『bounce』 277号(2006/6/25)

文/出嶌 孝次