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インタビュー

JURASSIC-5

一匹の恐竜もショウを止めることはできない! 名が体を表す5人組へと生まれ変わったジュラシック5は、かつてなく開かれた世界をめざす!!


 ソロ・アルバム『The Audience's Listening』の制作に伴うカット・ケミストの離脱劇を乗り越えて、前作『Power In Numbers』から約4年ぶりとなるサード・アルバム『Feedback』を完成させたジュラシック5(以下J5)。熱狂的なカット信奉者をはじめとする一部のファンからはグループの未来を危惧する声も上がったが、それがまったくの杞憂にすぎなかったことは疑似ライヴ仕立てのオープニング・チューン“Back 4 You”が始まって1分も経たないうちに思い知らされるはずだ。

「クリエイティヴなメッセージ、クリエイティヴなコンセプト、クリエイティヴなライティングを心掛けて、難しいものじゃなく誰もが楽しめて簡単に消化できるものを作るようにした。カットが脱退した影響? 影響というよりも、外部のプロデューサーと仕事するチャンスが増えて、いままでと違うことが試せるようになったね」。

 今回インタヴューに応じてくれたチャーリー・ツナの言葉にもあるように、カットの不在をポジティヴな要素へと転換してみせた『Feedback』では、数々の意欲的なコラボレーションが試みられている。その象徴的な楽曲にはクラッシュ・クルー“On The Radio”のリメイクに挑んだサラーム・レミ制作の“Radio”、モブ・ディープ“Pearly Gates”でメインストリームへの進出を果たしたイグザイルとの“Baby Please”などもあるが、やはりもっとも関心を集めるのはスコット・ストーチをプロデュースに迎えた“Brown Girl”だろう。ボニー・Mの“Black Girl In The Rain”をフックに配したタンゴ調のトラックは、J5はもとよりスコットにとってもチャレンジングな内容に仕上がっている。

 「スコットは素晴らしいプロデューサーだよ。リル・キムの“Lighters Up”とか大好きだね。彼はシンガーやラッパーがヴォーカルを乗せやすいように隙間を残しておいてくれるんだけど、それでいて複雑な構造のトラックが作れるんだ。“Brown Girl”の作業にあたっても、スコットは俺たちがやるべきところはちゃんと残しておいてくれた。最初にミーティングした後に骨格となるビートをくれて、俺たちがライムした後でまた彼が肉付けをしていったんだ。いい感じの曲になったよ」。

 そんななか、アルバムのマッシヴな手応えを高めているのが、過去最多の9曲を手掛けるDJヌマークだ。チャーリーがフェイヴァリットに挙げるオールド・スクール・ジョイント“In The House”、J5の前身ユニットであるレベルズ・オブ・リズムのリユニオン的な意味合いを持つ“Future Sound”、ボサノヴァ・タッチで迫る恒例のインストゥルメンタル・ジャム“Canto De Ossanha”などをはじめ、そのヴァーサタイルなビートメイクのセンスはデイヴ・マシューズ・バンドをフィーチャーしたリード・シングル“Work It Out”においても発揮されている。

「俺たちとデイヴでどんな曲を作りたいか話し合ったんだ。説教臭いやつじゃなく、聴いた後になにか考えさせられるようなものを作りたかった。そうやってみんなでいろいろ意見を交換していく過程で“Work It Out”のアイデアが生まれた。〈こうすべきなんだ〉っていうんじゃなくて、さまざまな事柄に対する自分なりのやり方について歌ってる。いい曲だよ」。

 新たな決意表明とも受け取れる力強いタイトルに反して、どこか牧歌的なムードすら漂う“Work It Out”の飄々とした佇まいは、カットの離脱という一大事にあってもあっけらかんと邁進し続けるグループのタフなメンタリティーを反映しているかのようでもある。この調子からすると新生J5に対しては、「6人なのにジュラシック5と名乗っておいて良かったね!」ぐらいの態度で接するのが望ましいのかもしれない。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月17日 00:00

更新: 2006年08月17日 21:57

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/高橋 芳朗