インタビュー

PHARRELL(2)

作らなければならなかったアルバム

 「そもそもソロ・アルバムを作ることは自分で否定してきたんだ」。
 スター・トラックの魅力をプレゼンするために2003年にリリースされた『The Neptunes Present...Clones』のキー・トラック“Frontin'”が、ファレル初のソロ名義曲。ジェイ・Zを招いた同曲の大ヒットと前後してソロ・アルバム制作の気運が高まったものの、そのつもりはないと周囲にも自分自身にも言い聞かせていたという……なんで?

「どうしてだろうな……いまでも自分をアーティストとは思えないし、もちろん当時もアーティストだなんて思っていなかったよ。アーティストとして活動をしている自分がヘンに感じるんだ。まるで他の人のことなのではないかと思ってしまうんだよ」。

 TVやプロモ・クリップ、CD、サインのためにファンから手渡される紙に至るまで何もかもが、まるで自分を映す〈鏡〉であるかのような錯覚を憶え、なかなかアーティストとしての実感が湧かなかったという。誰もが認めるスーパースターだけにソロとしての展開も当然のことに思えるが、そこには葛藤があったようだ。新たなステップのモチヴェーションは、これまでとは違うかたちで育まれた。

「このアルバムは気持ちを抑えられずに作った作品だ。これまで作ってきたレコードはどれも、このソロ・アルバムとは違うやり方……つまり楽しい気持ちを持ちながら、確かな自己表現をしてきた。でも、この作品は〈作らなくてはならない気持ち〉になって作ることになったんだ。収録されている曲はどれも〈これはどうしてもアルバムに収録しないと〉って思った曲ばかりなんだ」。

 そう語る14曲は、ヒップホップとR&B各7曲ずつのフォーメーションを備えている。“Can I Have It Like That”や次にシングル・カットされるスヌープとの“That Girl”はヒップホップ・サイド、独特のファルセットが効いた“Angel”や“Number One”はR&Bサイドとなる。

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掲載: 2006年08月31日 20:00

更新: 2006年09月07日 21:26

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/栗原 聰