インタビュー

PHARRELL(3)

さまざまな意見があるだろうけど

 「ヒップホップでは僕の内省的な側面を、R&Bでは僕の愛に対して傷つきやすい側面を表しているんだ」。

 例えば、精神科医に診てもらっているような不安定な気持ちを表した“How Does It Feel?”については「いくつかの問題に対して延々と言っているんだ」と、軽快な“Angel”については「最近は気持ちを高めるラヴソングがないと思うんだ。本当に女性を評価して愛する気持ちがあまりないよね」という。

「僕のなかでは、一枚のレコードでヒップホップとR&B両方をやれると思っていたんだ。多くの人がヒップホップはハードで、R&Bはソフトでなくてはならないという型にはまった考え方をしているようだけど、その点、僕はそういう型にはまらず、自分の好きなようにやりたいと思っている」。

 ジェイ・Zとはすでに彼の新作の制作を始めているという噂だが、今回の両者のコラボについてファレルはこう話す。

「ジェイ・Zとのコラボレーションが実現するまでには時間がかかったんだ……僕らはお互いからエネルギーを受け取っているのに、彼は(僕がいないところで)一人でやってくれたんだ」。

 また、フィーチャリングの表記はないが、ジェイミー・カラムも参加。このジャジーなシンガー・ソングライターとファレルは、“Frontin'”のカヴァーをキッカケにして現在はダチの間柄だという。日本でもヒットした『Cathcing Tales』に収録されるはずだった共演曲は未完成のままだが。

「彼は僕のジャズ・レコードでもいっしょに仕事をしていて、その作業の最中に歌ってもらったものなんだ。またいっしょに仕事をするよ」。

 2006年のポップ・アルバムとしてクロスオーヴァーにアピールする『In My Mind』は、その名のとおり彼個人の世界観を封じ込めたもので、外にある何かへ向けたメッセージはない。

「それはN.E.R.D.でやっていることだ。N.E.R.D.は社会的反応をするグループだよ。ソロ・アルバムはパーソナルな作品だからね」。

 そんなコンセプトであればなおさら、コンピュータのスペックのような具体的な説明は難しいだろう。

「フィーリングを追い求めただけのことだよ。彫刻家はこういう作品を作りたいというイメージが頭の中に浮かんでいるんだと思う。そして〈これでいい〉と思うまで粘土をこねたり、つまんだり、叩いたりと形を作っていくんだろう。そして乾燥させて出来上がるわけだよ。完成した作品を見て人は〈天才だ〉とか〈ダメだ〉などとさまざまな意見を言うだろうけれど、その作品は作っているときの彫刻家のフィーリングを表しているものなんだ」。
▼『In My Mind』に参加したアーティストの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月31日 20:00

更新: 2006年09月07日 21:26

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/栗原 聰