インタビュー

Beyonce(2)

大胆な選択だと思ったわ

 「いつもの私よりも情熱的で、とてもドラマティックな作品になっているの。〈ドリームガールズ〉の撮影が始まって、私が演じるデイナというキャラクターにすっかり入り込んでしまったのね。合計6か月くらいになるかしら。だからその間、デイナに言わせたいと私が思っているようなことがそのまま曲になった、というわけ」。

 アルバム全体の印象は、後期デスチャ~ソロ1作目の『Dangerously In Love』で顕著だった〈成熟したオトナのビヨンセ〉的イメージから一巡、“Independent Woman”“Survivor”直系のパワフルな楽曲が並ぶ。

「アップテンポで力強い曲を作りたかったの。『Dangerously In Love』は恋愛の美しさについて歌ったアルバムだったけれど、恋愛にはそれほど美しくない面もあるでしょ? 今回はその部分にも触れようと思った。女性として、恋愛の苦しい部分を受け入れるためにはちょっとした勇気が必要だし、このアルバムが少しでもその助けになれたらいいと思って」。

 そんな彼女のアグレッシヴさはプロデューサー選びにも垣間見ることができる。デスチャ時代から抜群の相性を誇るロドニー・ジャーキンスや前作のリード・シングル“Crazy In Love”を大ヒットに導いたリッチ・ハリソンのような手堅い人選のみに頼らず、何とアルバムの大半をスウィズ・ビーツが担当。DMXやジェイ・Z、最近ではT.I.仕事などで絶好調のスウィズが掛け声やホイッスルなどを駆使した、トレードマークの〈アオリ系〉トラックに果敢に挑むビヨンセ。これはまさに新境地!

「大胆な選択だとは思ったわ。R&Bシンガーが彼をあそこまで起用することは珍しいかもね。彼のトラックは音楽というよりはビートと呼ぶのが相応しいタイプのものだから、メロディーを引き出すのも一苦労で。だけど私にとってはそれが魅力なのよね。いろいろな人のトラックを聴いたけど、私が惹かれたのはスウィズのビートだったの」。

 独特の空気感と奇想天外な展開が〈いかにも〉なネプチューンズも2曲で参加。ソングライターとしてのビヨンセの柔軟さを十二分に引き出している。

「ヴァケーションでマイアミに行ったら偶然ファレルもマイアミにいて、私が来てることを聞き付けてトラック入りのCDをくれたの。聴いたら何もかもがパーフェクトで〈Oh, My God!〉って感じだったわ。生楽器とハードなビートの両方が共存していて、それでいてメロディアス。〈いったいどうなってるの?〉って驚くようなトラックよね。彼らはホント、ネクスト・レヴェルな人たちだわ」。

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掲載: 2006年09月07日 23:00

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/渡辺 深雪