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インタビュー

『B'Day』に駆けつけた〈安定志向〉で〈先鋭的〉なクリエイターたち

 デスチャ時代も含めて、ビヨンセは常に気鋭のサウンド・プロデューサーと組み、新しい音と共に進化してきた。だが、今回のニュー・アルバム『B'Day』の制作陣を見てみると、キャメロン・ウォレスのような新鋭らしき人物もいるものの、多くは一度黄金期を迎えたプロデューサーたちだったりする。先行シングル“Deja Vu”を手掛け、先日オーディション用のインスト集『Versatility』もリリースするなどして気を吐くロドニー・ジャーキンスをはじめ、スウィズ・ビーツ、ネプチューンズ(P27参照)がいい例だ。しかし、そんな彼らがここ最近新たなヒットによって何度目かの黄金期を迎えている面々であることを思えば、これは単なる安定志向ではなく、やはりビヨンセの目の付けどころは鋭い。特にアイス・キューブやDMXの最新作でも絶好調なスウィズ・ビーツを“Check On It”の成功から間もないうちに起用し、奥方のマションダを嫉妬させそうな勢いでR&Bの新しい音世界を共に作り出さんとする姿勢は痛快だ。そこにジェイミー・フォックス仕事などで好調なショーン・ギャレット、ニーヨを手掛けてUSでも名を上げている北欧ポップ職人のスターゲイト、前作からの続投となるリッチ・ハリソン(エイメリーとの仕事が名高い)を加え、〈オーソドックスで斬新〉な音作りを実践。こんな二律背反をいとも簡単に両立させてしまえるのは、いまビヨンセしかいない。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年09月07日 23:00

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/林 剛