インタビュー

Justin Timberlake

 望むべき未来は、本当のセクシーは、真実の愛は、本物のサウンドはどこにある? 喧噪はもう振り返らない。真のジャスティン・ティンバーレイクはここにいる

プログレッシヴになったと思う


「『Justified』は4年前なのにもっと昔のことのように感じるね。みんなも気に入ってくれたと思うし、思い返せば予想以上のものだった。ニュー・アルバムを作る時にもそれは意識していたよ。みんなが予想できないようなものを作りたいってね」。

 黒革の手袋をはめた“Like I Love You”で彼がソロ・デビューを果たしたのは2002年。ファースト・アルバム『Justified』は大ヒットを記録したし、そこからはティンバランドによる革新的な“Cry Me A River”も生まれた。ただ、何かしらのフィルターがある種の人の目と耳を曇らせていた部分はあるだろう。そういう人は気付きたくなかったのだ。にこやかな〈ミッキーマウス・クラブ〉出身の細っこいアイドル君が恐ろしい潜在能力を秘めたアーティストであることに。カイリー・ミノーグのケツを掴んだり、ジャネット・ジャクソンのオッパイを丸出しにしてビックリ顔をしている芸能スターが、膨大な音楽性の引き出しを備えた存在だということに。でも、『Justified』を聴いた人は知っている。ティンバランドやネプチューンズといった先鋭的なビッグ・ネームは、彼の才能を世に知らしめるための触媒だったのだと……。

 で、その男、ジャスティン・ティンバーレイクの凄まじさをいよいよ本格的に認めさせることになる新たな一撃こそ、『FutureSex/LoveSounds』と名付けられたニュー・アルバムだ。プロモーション来日していた彼に話を訊いた……のだが、取材前にはアルバム中の8曲を試聴会で1度聴いたきり。時間は15分。NGワードはキャメロン、ブリトニー、ジャネット、アギレラだって。そんなこと別に訊きたくないんだが……ポップスターも大変ですな。

――ファースト・シングル“SexyBack”を聴いた時、イン・シンクの“Pop”を思い出したんだけど、トランスっぽいアレンジとメロディーが一体化したような、ああいう尖った曲を当時からもっとやりたかったってこと?

「それは全然考えていなかったよ、ごめん(笑)。むしろイメージしたのはデヴィッド・ボウイの“Rebel Rebel”だったかな。確かに“Pop”も似てるけど、“SexyBack”のほうがメロディーが豊かだと思う。自分の声も楽曲自体のレヴェルも上がって、プログレッシヴになったと思う。ハウスやロック、ヒップホップの要素が全部入っていて、凄くオリジナリティーがあるよね?」

――そうですね。じゃあ、前作を踏まえての目標とか注意点はあった?

「自分のなかで基準のようなものがあって、“Cry Me A River”の水準に達するような曲ばかりを入れたいと考えていたんだ。あの曲は本当に画期的だったから。(前作でネプチューンズが手掛けた)“Like I Love You”とか“Rock Your Body”もいいけど、よりクールな印象を受けるし。方向性をひとつに絞ったという意味じゃないけどね」

――それで今回はティンバランドがメイン・プロデューサーなのね。

「(強調して)ティムと僕の共同プロデュース作品だよ。各々が違うアプローチで作業したからこそケミストリーが生まれて、とても上手くいったよ。曲を書きながら同時進行でプロデューシングする形で、自然に作れたから前作以上にコラボの密度は高いと思う」

──2人じゃなくて、デンジャ(ティンバランドの最近の相棒)も関わってるよね?

「そう! ネイト(・ヒルズ=デンジャ)もね。今回はチームで作曲するような感じだったから、各々の担当とかは明確じゃなかったんだよ。ネイトはピアノもプログラミングも得意だから、僕とティムが何かを共同作業してる間に彼が違うことをしていたり、皆でアイデアを出しつつという感じだね」

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掲載: 2006年09月28日 21:00

更新: 2006年10月05日 22:17

ソース: 『bounce』 280号(2006/9/25)

文/出嶌 孝次