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インタビュー

『SENSUOUS』の世界で見え隠れする音の成分を勝手に分析!!

 『SENSUOUS』からは、一筆書きのようなシンプルさと匿名的な存在感を提示した、前作『PO-INT』とはまた違った音楽的要素を見て取ることができます。まず思い起こされるのは、小山田自身も「最近のポップ・ミュージックでは聴かれない音だから、相当フレッシュだった」と語り、最新作をレコーディング中に愛聴していたというスクリッティ・ポリッティ。そんな彼らの85年作『Cupid & Psyche 85』における、当時としては画期的なフェアライトを導入した、多種多様の音楽的な引用を想起させるサウンドのアプローチなどに『SENSUOUS』とも通じる気概を感じます。また“Sleep Warm”の原曲は、道化師の涙が描かれたジャケットも象徴的な、ディープでメランコリックなフランク・シナトラのアルバム『Only The Lonely』に収録されていますが、コーネリアスによるカヴァーでは、まるでヤン富田がドゥーピーズのプロデュース時に発揮するような重層的な多幸感を感じるはず。一方で、瀧見憲司のマッドなリミックスを収録した12インチも発表される“Beep it”では、ヒプノティックなシンセ・ベースの音がリンドストロムの諸作を彷彿とさせます。オルタナティヴなダンス・カルチャーとの接点を感じずにはいられない一曲です。さらに、中期YMOが生んだ傑作『BGM』で感じる、実験性と〈歌〉への眼差しが生んだポップネスとの融合は『SENSUOUS』全体のトーンにそのまま当てはまる重要な要素でもあり、“CUE”をカヴァーしたのも決して偶然ではなかったのでしょう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年11月02日 17:00

更新: 2006年11月16日 21:53

ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)

文/駒井 憲嗣