インタビュー

BY PHAR THE DOPEST × RHYMESTER

BY PHAR THE DOPEST ⇔20年来の友情を育む2本のマイクが10年ぶりに再合体! 〈マジで無茶苦茶ドープ〉なトラックとフリーキーなフロウに乗って身体を揺らすのは……決して恥じゃない!!

〈オレらはもっとできるな〉って


写真/古渓一道

  ソロ・ラッパーとして自身のスタイルを追求し続けるKREVAとCUEZERO。幼馴染みでもある彼らが10年前に結成したBY PHAR THE DOPEST(以下BPTD)は、98年にファースト・アルバム『BY PHAR THE DOPEST』を発表して高い評価を得たが、その後CUE-ZEROはヒップホップ修行のため単身NYへ渡り、KREVAはKICK THE CAN CREWの活動へと別々の道を進み出したことで活動休止状態となっていた。だがこのたび、BPTD結成から10年、ふたりが出会って20年、そして生まれて30年という節目の年に活動を再開し、ニュー・アルバム『だからどうした!』をリリースする。

「トラックでは、誰もやってないことがしたかったんです。それで、(ふたりの生まれた年である)76年のサンプリング・ネタを使うって縛りを作ったんです」(KREVA)。

「そのぶんラップでは縛りをなくして、広がりを持てるようにしました」(CUEZERO)。

 久々の合体作ということもあり、「1曲1曲ちゃんと話し合って、ふたりで同じ切り口が見えるように、っていう作業をスゲーした」とKREVAも語る本作は、映画「ラストコンサート」のサントラから〈美しい愛の始まり〉のメロをKREVAが歌い上げるサビも強烈な“ラストコンサート”で幕を開ける。続いて、低く唸るCUEZEROのラップもムーディーな“We back!”、ラベル“Isn't It A Shame”を拝借してKREVAの歌を乗せた、タイトルもまんまの先行シングル“恥じゃない”や、KREVA流ラガ・フロウが飛び出す“くれ万端”とヴァラエティーに富んだ楽曲が満載。また、四人囃子“泳ぐなネッシー”をサンプリングした前のめりなオケの“音愕業改”と、同じネタを使いながらもリラックスした表情の“天国と地獄”で聴かせる対比も興味深い。黒さもあれば、シリアスさとユーモアのバランスも絶妙な本作だが、そのテーマはタイトルにもある〈だからどうした!イズム〉とのことで……。

「〈なんでこのトラックでこの歌詞なの?〉という問いに対する、〈だからどうした!イズム〉は持ってましたね。もちろんそれはスゲー考えたうえのことだけど。最終的に突っ込みどころは、タイトルも含めて全部に残してたな」(KREVA)。

 各々のソロ作とも違えば、過去の作品とも違うサウンドが詰まっている本作からは、ふたりの〈これまで〉と〈これから〉が透けて見える、といっても過言ではないだろう。

「ソロで頭の中で作っているのと、意見をぶつけ合って作るのとでは全然違った。だからスゲー成長したと思う。次に自分らのやることが楽しみ。やっぱ、いま真剣に向き合わないと今後のデカい認知にも繋がらないと思うし、〈オレらはもっとできるな〉ってことがわかったんです」(KREVA)。

「たとえ小学校の時に知り合ってなくても、ずっといっしょにやってても、このクォリティーにはならなかったと思う。お気に入りだけリピートして〈ながら聴き〉するんじゃなく、映画を観る感じでガチッと一枚とおして聴いてください!」(CUEZERO)。
(インタヴュー・文/土屋恵介)


“Isn't It A Shame”を収録したラベルの76年作『Chameleon』(Epic)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年01月25日 21:00

更新: 2007年01月25日 21:04

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/土屋 恵介、猪又 孝