Clap Your Hands Say Yeah(2)
彼ならしっかりと録音してくれるかも
その場所というのは、NYの山の中にあるデイヴ・フリッドマン所有のターボックス・スタジオ。USインディー・シーンの雄であるフリッドマンの音作りにはあえてこだわらず、ただ「彼なら、僕らがやることをそのまましっかりと録音してくれるかも」という思いで、昨夏スタジオに入った。
「結局、問題は時と場所なんだよね。今回使用した楽器も、スタジオにあっておもしろそうだったから使ってみただけでもあるし。本当に状況次第だった面もあるんだよ。そんな中で、ひとつの形を持った曲たちを携えてレコーディングに入って、実際にいじってみて、そこからアルバムに合うか合わないかで収録曲を決めていった感じなんだ」。
こうして生まれたのが、ポップなインディー・ギター・ロックという基本軸はメロディーラインにちゃんと残しつつ、さまざまなノイズなどを使って柔らかなウォール・オブ・サウンドやサイケデリックな層を持つこの作品だ。ポップでありつつ、アヴァンギャルド。ダンス風のビートを用いたり、ミニマル・ミュージックも真っ青な展開を持たせたりと、この男の頭の中を一度ちゃんと覗いてみたいと思わせるほどに、多彩な作品となった。そして、そんな曲たちに一貫性を持たせるアレックの歌声が、デヴィッド・バーンと比較されがちだった前作の頃よりも表現力を増していてグッとくる。
「前作は、曲が生まれた時とほとんど同じ形で演奏した曲ばかりを録音していた。でも今回は、場合によってはひとつの曲にたくさん──それぞれ5つか6つくらいのヴァリエーションがあって、もしかしたらそのヴァリエーションを使って別のアルバムが作れるかもしれないほどなんだ(笑)。曲の構成はみんなの前でどうこういうより、僕の中ですべて出来上がってきたものだったりするんだよね。たとえば急にワルツが入ったり、キーやリズムが変わったりするんだけど、そういうのがスーッと入って、それで曲がおのずと完成していくみたいなプロセスだった。そういうのも含めて、とにかくすべて僕の思いつきでやっていったこと」。
他のメンバーによれば、アレックは出来上がったさまざまなヴァージョンから1曲を選ぶ野性の勘にも長けているのだそう。曲という個を聴き込んで楽しむも良し、それが連なって生まれるアルバム全体の空気に震えるも良し。なにしろ本作は、音楽が感覚的であると同時に知性的でありうることを饒舌に伝えているのだから。
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