インタビュー

Timbaland(2)

俺が誰だかわかってるのか?

 そして登場したニュー・アルバム『Shock Value』には、想像もつかなかったゲストやいままで聴いたことのないような斬新なプロダクションが含まれており、アルバム・タイトルさながらにショックを受けるリスナーも多いだろう。

「このアルバムはあまりにもショッキングで、俺だってショックを受けてるくらいさ(笑)。俺がゲスト・アーティストを選んでも、〈あの人とコラボレーションなんてできないよ〉って言われたりしたんだぜ。〈お前にそういう音楽は作れないよ〉と疑われたこともあったけど、〈俺が誰なのかわかってるのか?〉って言いたくなるね。俺はキングだぜ(笑)。キングは何をやったっていいんだ。カントリーだってフォークだって作ってもいいんだよ」。

 ジャスティンとネリーをフィーチャーした先行シングル“Give It To Me”はすでにラジオでヘヴィー・ローテーションとなっているが、アルバムを聴いてまず驚かされるのは、フォール・アウト・ボーイやシー・ウォンツ・リヴェンジ、さらにスウェーデンのハイヴスなどエッジの効いたロック・バンドを多数フィーチャーしていることだろう。

「俺は昔からロックが大好きだよ。メタリカも俺のフェイバリット・バンドのひとつだよ(笑)。“Throw It On Me”を作った時は、凄くエネルギッシュなトラックが出来上がったから、それに対応できるバンドを探していたんだ。海外のバンドと仕事してみたかったというのもある。ハイヴスは凄くエネルギッシュだし、ヴォーカリスト(ハウリン・ペレ・アームクヴィスト)を見てトラックにハマってると思ったんだ。彼らのファンだし、すごく異端的なバンドだと思うよ」。

 ロックとティンバランドのビートの融合は意外に思えるかもしれないが、それはロックやヒップホップというカテゴリー以前に、ティンバランドにしか作り出せないアグレッシヴでダンサブルなサウンドに仕上がっている。彼の憧れの存在であるドクター・ドレーが参加した“Bounce”、50セント&トニー・イエイヨー参加の“Come And Get Me”などビッグなラッパーをフィーチャーした楽曲も注目に値するが、エルトン・ジョンのような予想外のゲストも目を引くだろう。ラスヴェガスで録音されたというエルトンのピアノ演奏は“2 Man Show”で使用されている。

「エルトン・ジョンはソウルフルな白人だし、エッジのあるアーティストなんだ。俺だってエッジがあるから、エッジのある人を選ぶようにした。俺のサウンドにはグランジがあるんだ。俺がコラボレーションをするアーティストが美しい音楽を作っていても、それを俺の音楽のグランジ的な要素とどうやってさせるかが大事なんだよ」。

 また、スリランカ生まれのUK女性ラッパー、M.I.A.が参加したことからもわかるように、ティンバランドは海外アーティストとのコラボレーションにもこだわっている。

「とにかく、既存の枠組みに囚われない人と仕事をしたいんだよ。M.I.A.もそういう人なんだ。このアルバムは本当にヤバイ内容になってるから、〈Part 2〉を作りたいね。次のアルバムはいろんな国から1人ずつホットなアーティストを選んで仕事してみたいんだよ。“We Are The World”みたいなことを〈Part 2〉でやりたいね」。

 今後はマドンナやビョークとのコラボレーションなど、ファンの期待をそそるプロジェクトが待っているというし、ティンバランドの快進撃はまだまだ続きそうだ。その先鋒として『Shock Value』は低迷気味で飽和状態の音楽業界に〈ショック療法〉を与えてくれるに違いない。


ティンバランドの98年作『Tim's Bio』(Blackground/Atlantic)


ティンバランド&マグーの2001年作『Indecent Proposal』(Blackground/Virgin)

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掲載: 2007年04月05日 16:00

更新: 2007年04月05日 16:08

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/バルーチャ・ハシム