インタビュー

R. Kelly(2)

R&Bは上昇していってる

 また、極めてヒップホップ度が高い今回のアルバムでは、スヌープ・ドッグやネリー、リュダクリスといった豪華なゲスト陣もさることながら、ケリー自身のラップ的なヴォーカルが際立っていることも特筆すべきだろう。彼は早くからラップ・シンギンを実践してきた。

「ラップ・シンギンをやり始めた理由は、単にR&Bっていうレッテルを貼られるだけの状況から必死に抜け出そうとしていたからだと思う。R&Bだけで終わりたくないって思ってたからね。オレはたまたまあらゆるスタイルの楽曲を書ける才能を持ってるから、スピリチュアルな観点からメロディーとミュージック、それからフロウを融合することができるんだ。そのひとつの例が“I Wish”(2000年)なんだよ。実はあの曲は2パックといっしょにやるはずだったんだ。でも実際にはあの痛ましい事件が起こって……」。

 ケリーはそう衝撃の事実を告白し、非業の死を遂げたラッパーとの共演作として書いた“I Wish”のラップ・パートと、実際に発表されたケリーのソロ曲としてのラップ・シンギンを続けて披露してみせた。

「ラップっていう形態で聞こえてきたものをメロディーに変え、そのフロウに合わせて歌い直したんだ。そうやってラップ・シンギンはクリエイトされたんだよ」。

 むろん、キング・オブR&Bはヴォーカル・ナンバーにも手を抜かない。二股オンナに引っ掛かったふたりをアッシャーと演じる“Same Girl”、子供を授かった感動を高らかに歌う“Havin' A Baby”、ギャラクティックなセックス模様が展開される“Sex Planet”、4月にヴァージニア工科大で起こった銃乱射事件の犠牲者に捧げたバラード“Rise Up”などなど、実にさまざまなトピックをさまざまなスタイルで表現してみせている。ヒップホップから生粋のR&Bまで何でもこなす幅の広さ。流行をいち早く見極める勘の良さ。新しい流れをクリエイトする先進性。それらがケリーの強みであり、ケリーのR&Bを前進させ続けている原動力だ。彼はR&Bの未来をこう占う。

「R&Bはいま上昇していってるところだと確信してるよ。多くの人がR・ケリーを気に入ってくれてるし、T・ペインやエイコンを支持してるからね。既成概念に固執しなければ、オレの才能はさらに発展を遂げられる。R&Bは永遠に存在し続けるんだ」。

 アルバムを出すごとに期待を裏切ることなく新しい世界を見せてくれる男。R・ケリーのRはRevolutionのRでもあるのだ。

▼『Double Up』に参加したシンガーの作品を一部紹介。


キーシャ・コールの2005年作『The Way It Is』(A&M)

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掲載: 2007年06月07日 20:00

ソース: 『bounce』 287号(2007/5/25)

文/荘 治虫