インタビュー

Rさんは負けず嫌いなトレンドウォッチャー!?

 Rさんが歌うヤング・ジーズィの最新ヒット“Go Getta”が、エイコンを迎えた同じくジーズィの大ヒット“Soul Survivor”そっくりに聴こえたなら、それはRさんがエイコンを猛烈に意識した結果だろう。Rさんはチャーリー・ウィルソンの影響下にある濃厚男性R&B唱法の究極形態であり、アイズレー・ブラザーズやマーヴィン・ゲイ、サム・クックらの伝統を現代的に表現する人だけど、その凄さは同時代~後進アーティストからの影響を臆面もなく自作に反映させていく点にある。これまでにも作品に応じてシスコやロームのフロウを採り入れ、スヌープとはネイト・ドッグ風に絡み、ワイクリフから枯れた唱法を奪い、ボンサグを引用し……と、Rさんの貪欲なトレンドウォッチャーぶりは凄まじかった。ラテンやダンスホール・レゲエ、クランク、レゲトンの流行に速攻で飛びついたのも、格好良いヴォーカル・フロウやビートに挑戦せずにはいられない性分の表れなのだろう。この気質が抜けない限り、Rさんの天下は続いていくに違いない。そんなRさんを巧みに真似るアル・ヤンコヴィックさんという強者もいるけど……。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年06月07日 20:00

ソース: 『bounce』 287号(2007/5/25)

文/出嶌 孝次