インタビュー

capsule(2)

自分のきっかけで

 「第一印象的に取っ付きやすいニュアンスというのは、他のプロデュース作品でけっこうやっているので、capsuleではそういう〈前置き〉要素というのは必要ないな、と思って。今回は、2007年最後の僕の作品で、〈自分のきっかけ〉で作るアルバム。本当に自発的に作る場合にしかできない良さを表現するためのアルバムだと思います。そういう意味で〈提案〉は入れやすい。自由でいてマニアックではない。それでいて〈普通にいい〉っていう感じには陥らない。つまり、それこそ本当の意味でのポップスだと思うんですけど。そういう、レヴェルが高い意味でのポップスをやれたら」。

 capsuleのサウンドに、それまでのボサノヴァやラウンジ・ミュージック的手法を介した楽曲と同居する形で、ニューウェイヴ回帰~ニューレイヴ現象を通過したダンス・ポップ的な要素が見え隠れするようになったのは、2005年の『L.D.K. Lounge Designers Killer』あたりからだ。そして、プログレッシヴ・ハウスからフレンチ・エレクトロまでを下敷きにcapsuleのニューフォームは、2年半のうちに〈覚醒〉と呼びたくなるような変化をみせた。新作『FLASH BACK』はそんなモードを過激に推進した仕上がりだ。例えば、ヴィタリック流儀の転調処理が心地良い“MUSiXXX”や、ジャスティスばりのカットアップ処理を仕込んだ“FLASH BACK”など、時代の〈記号〉を絶妙のアレンジで忍ばせたフロア・キラーもある。しかしながら、アルバム全9曲を37分40秒で駆ける世界観には、他のcapsule作品同様に〈コンセプト・アルバムとしてのポップス〉を感じることができる。

「自分のなかでは〈歌謡曲の構造をしてなくてはいけない〉という時期も〈DJに向けたフォーマットでなくてはいけない〉という時期も通り過ぎていて。曲としていちばんカッコイイ状態、っていうのがベストだと思うんです。みんなが〈フツー〉っていうものを作っちゃったら、ポップスが終わっちゃう。ポップスは〈衝撃〉があるから更新されていくもので、衝撃がなかったら、〈ポップス〉っていう言葉自体が過去のものになってしまうから」。

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掲載: 2007年12月27日 18:00

更新: 2008年01月18日 17:26

ソース: 『bounce』 294号(2007/12/25)

文/リョウ 原田