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インタビュー

capsule(3)

作り手が楽しんでいれば

 彼にとって、capsuleと外部仕事の決定的な違いは「デモテープもいらないし、制作プロセスにおいて誰かに確認する必要もない」ことにあるという。ヴォーカル録音とトラックの制作、編曲、すべてのプロセスを作曲と捉え、〈インストゥルメンタルなのか、ヴォーカルなのか〉や〈フックが必要なのか、ブレイクが必要なのか〉を適宜柔軟に判断する。そんな判断の結果、エレポップ・ディスコ“Eternity”も、capsule版“体操”ともいえそうな“Get down”などの〈歌モノ〉楽曲も完成したようだ。中田流ダンス・ポップはCHERRYBOY FUNCTIONら(ほぼ)同世代のテクノ・アクトとの音楽的な共通点を指摘されることもあるが、〈(なるべく)自分自身が用意した環境で完結させる〉という制作過程を聞いて、妙に納得してしまった。

「〈器用〉っていう意味でのプロフェッショナルの仕事は、みんな聴き飽きていると思うんですよ。ソツがないというか、驚かない。空気が変わるような、違和感があるような音楽が少ないと思う。〈こういうエッセンスを足そうぜ〉っていうのと〈好きでやっている〉のは違いが出るし、作り手が思い入れを持って楽しんでいたら、いろんなジャンルで自由なものがたくさん出てくるんだと思います。どんなジャンルでもおもしろいものはおもしろいんで」。

 capsuleの劇的な変化に、違和感を感じてきた人もいるかもしれない。しかし、サウンド・デザイナーである中田ヤスタカ自身の〈いま、おもしろい〉〈いま、カッコイイ〉に忠実なモードを提案するのが、capsuleのポップスだとしたら……貴方が、大衆がそれを受け入れた時、capsuleとポップスの蜜月が始まる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年12月27日 18:00

更新: 2008年01月18日 17:26

ソース: 『bounce』 294号(2007/12/25)

文/リョウ 原田