インタビュー

Snoop Dogg

伝説的なデビューから15年……西海岸シーンのご意見番として精力的に動いてきたボス犬が、今回ばかりは自己陶酔? とんでもなく高密度な新作の秘密とは?

俺はファミリー・マンだ


 「ネガティヴな人生を卒業したんだよ。俺は確かにギャングの一員だった。でも現在は〈Stop The Violence〉を掲げてるし、若者やギャングたちにも呼びかけて良い環境を作ることもしてる。俺は危ない生き様を経験してきたから、彼らのことは理解できるしね」。

 CNNの「Larry King Live」にてこのように発言している(以降の発言はすべて同番組からの引用)ことからもわかるように、(いわゆる)ギャングスタ・ラッパー的なパブリック・イメージとは異なり、最近はヒップホップ・シーンはもとより社会に対しても非常に意識の高い活動が目立つスヌープ・ドッグ。確かにここ数年は、長く不仲状態だったダズ・ディリンジャーとコラプトを和解させ、みずからも加わった〈オリジナル・ドッグ・パウンド〉を復活させたのを皮切りに、〈Protect The West〉なるスローガンを掲げて西海岸シーンの結束を、前作『The Blue Carpet Treatment』収録の“Vato”では黒人とラティーノの結束をそれぞれ訴えて、シーンの牽引に力を注いでいた。また、昨年から家族ぐるみの出演で「Snoop Dogg's Father Hood」なるリアリティーTV番組を開始し、ファミリー・マンとしての一面も公にしているのも、その流れで捉えていいものだろう。

「俺は家族といっしょの番組にしたかったからね。俺が妻に話して、彼女は子供に話してくれた。番組を始めることは、いまから思えば必要不可欠だったのかも知れない。〈家族の一員としてのスヌープ〉、そして〈健全なスヌープ〉を世に見てもらうことが可能となったからね」。

 そんな意識の高い活動が反映されたのか、前作から比較的短いスパンで届いた新作『Ego Trippin'』はこれまでのスヌープ作品中でもっとも高い音楽性を感じさせるアルバムに仕上がっている。『Ego Trippin'』――〈自己陶酔〉というタイトルは、意識の高い活動の反動ゆえか、単にみずからの嗜好に正直に取り組んだまでの結果だったりするのかもしれないが……。

「いまの俺は慎ましく生きようという域に達してるんだ。キャリアという面でね。ナイスガイになって、どんな人にも気さくに振る舞って。そこで、あえて〈自己陶酔〉するってわけ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年04月03日 17:00

ソース: 『bounce』 297号(2008/3/25)

文/升本 徹