こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

曽我部恵一BAND

青春は10代だけのものだといったい誰が決めたんだ? 平均年齢30歳超えの新人バンド(!?)が放つ、とびきり『キラキラ!』した激情を聴いてみな!!

音楽に対して同じ情熱を求める4人組


 曽我部恵一BANDを初めて目撃したのは3~4年前だったろうか。開演前、その日の共演バンドであったLABCRYの三沢洋紀から「曽我部恵一BAND、カッコイイ!〈30代のブルーハーツ〉ですよ、あれは」という話を聞いていて、正直その感想にはいまひとつピンとはきていなかったのだが、実際に観て、聴いて、納得。そこには聴衆とのコミュニケーションを渇望し、シンプルなメッセージをこれでもかこれでもかこれでもかと熱い演奏で発するロックンロール・バンドの姿があった。10代でブルーハーツを初めて目撃したときを思い出させるような……。

「3年くらい前だよ、たぶん。曽我部恵一BANDを始めてちょっと経ったくらい。ひたすらライヴを演ってたからね。あれから何百本もやった」と曽我部恵一(ヴォーカル/ギター:以下同)。世紀を跨ぐのとほぼ同時にサニーデイ・サービスを解散させてソロ活動を開始し、ほどなくして自身のレーベル=ROSEを設立――そして現在に至る。と、ざっくり言うとそんな人が曽我部恵一。曽我部恵一BANDでの立ち位置は、トム・ロビンソン・バンドでいうところのトム・ロビンソン。遠藤賢司バンドでいうところの遠藤賢司だ。

「ひとつサニーデイをやったことで、いろんなことに対して諦めがついたところもあるし、完成したところもあるし……納得はいってたからね、ある程度。で、ソロになってやってきたなかで、やっぱりバンドが必要なんだなっていうところが必然的に出てきた」。

 そうして集まった4人。メンバーは曽我部のほか、一時はニール・ヤングとクレイジー・ホースのような幸福な関係を築いていたバンド、OO TELESA(現在は解散)から上野智文(ギター/ヴォーカル/元美少年)と大塚謙一郎(ベース/ヴォーカル)、そして空気公団などでその腕を振るってきたオータコージ(ドラム/ヴォーカル)。なにゆえこの4人なのか、と。

「音楽に同じ情熱を求めてるかどうか。とにかく同じバンドワゴンに乗って日本中どこでもいっしょに回れるヤツら、っていうことだよね。自分と情熱が変わらなかった。で、(ライヴで各地を)回れば回るほど情熱や思いが大きくなっていった。やっぱり最初の頃は地方に行っても知らない人が多いじゃない? だから〈もっと認知されたいなあ〉とか〈もっと客来ないかなあ〉とか思うんだよね。でもそこから始められて良かった」。

 このバンドにとって、曽我部の言う〈そこ〉は非常に重要なのである。例えば、サニーデイ・サービスの世界を継承した歌を作り、歌い続けて、誠実なファンとの幸福な〈Grow Old With Me〉を果たしていく、という道もあったろうに。

「それになりたくなかったの。だったらもう、1からやるしかないんだよ。理想としていつもファースト・アルバムを出したいってのはあるけど、それはムリじゃん。でもなんとかそれを具現化したい。そのためには、ファースト・アルバムにあるべきその前の期間をちゃんとやんなきゃいけない。スタッフもなく、4人でバンドワゴンに乗って、物販も片付けも全部自分らでドロドロになりながらやって3年間過ごすってことをまずやんないと、こういう作品はできなかったし、〈こんなことやりながらも輝いてんだ! みんな大変だけど輝こうぜ!〉っていうメッセージはできない。昔だったら〈名盤が完成しました。どうだ! これで世界が変わる!〉みたいなところがあったんだけど、いまはそういうふうに思わないんだよね。世界を変えるためには、またこのアルバムを持って回らなきゃいけないし、それをずっと続けていけば〈Younger Than Yesterday〉でいられるんじゃないかなと思うんだけどね」。

 結果、完成した〈こういう作品〉こと『キラキラ!』は、まさしく〈ラモーンズの激情〉なファースト・アルバムとなった。ライヴを重ねた足跡を結実させた、コンパクトで強い音楽。

「ライヴは絶対喜んでもらわなきゃいけない、ハズせないっていうのはメンバーみんなあるわけ。ツアーで地方に行って──お笑いといっしょなんだけど──ウケるためならなんでもやる、みたいなところはあるんだよね。ハンブルグ時代のビートルズみたいな、毎晩演奏やって、それで音がどんどんロックンロールにタイトになっていった、みたいなのがあるじゃん。それと変わらない。最初は長尺ジャムみたいな部分もあったんだけど、そういうのがなくなってきた。例えば、秋田とか行って子供たちの前で演ってさ、長尺ジャムはやっぱ響かないから(笑)。あと、銀杏BOYZとかとやると、お客さんはみんな即効性のある表現を求めてるから、ジャム部分とか長いソロとかはあんまり好かれないんだよね。あとで〈ウケなかったねえ……〉とか言ったりして」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年05月08日 18:00

ソース: 『bounce』 298号(2008/4/25)

文/山内 史