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インタビュー

Shing02

銃口と焦燥を携え、再興と抱擁を渇望しながら、禍々しく歪曲した世界の表通りへ、殴雨の真っ只中へ、マイクを握り締めて、6年越しの物語が、いま、ここに


  ここ数年で日本語ラップはさらなる盛り上がりを見せた。さまざまな才能が切磋琢磨しながら、その水準も飛躍的に上がった。それに対して、カリフォルニアを拠点としているからだろうか、Shing02というMCの立ち位置はいまなお独特だ。表現している音楽は、他の誰とも似つかない個性的なものだし、グローバルな観点──日本に対する俯瞰的な視点が、ズバ抜けた量の語彙と、知恵や知識、時に2か国語対応も見せる変幻自在なスタイルに活かされている。リリックは、日本語ラップというより〈国語ラップ〉とでも言ったほうがいいほどのものだが、そこには明晰なユーモアがあって、小難しくも嫌らしくもない。

それまでにも圧倒的な支持を誇っていたShing02が、アルバム『400』でその評価をいっそう高めたのは2002年。以降の彼は、即興スペース・ジャズ・トリオのKosmic Renaissanceで活動し、ヴェスタックスとフェーダーボードなる機材を共同開発。または〈STOP ROKKASHO〉プロジェクトなどでも足繁く動き回り、いくつもの客演を展開してきた。そのようにさまざまな活動で常に僕らの好奇心を刺激し続けてきた反面、何しろ最後のアルバムからは6年が経過しているのだ。ファンはヤキモキする気持ちを抑えて、オリジナル作品をじっと待っていたに違いない。しかし、その甲斐もあったというものだろう、完成したフル・アルバムは目を見張るほどの大作となった。満を持して、しばらくぶりの長編『歪曲』が〈公開〉されたのである。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年07月10日 19:00

ソース: 『bounce』 300号(2008/6/25)

文/栗原 大