インタビュー

GYM CLASS HEROES

チマチマした勉強の時間は終わり! もしキミが属性で音楽を判断したりしないオープンマインドなリスナーなら、いますぐ体操服に着替えて集合すること!! 4人の英雄たちがロックもヒップホップも自由に響かせてくれるよ!!

オレたちはファンを映す鏡だ


  体育の時間のヒーロー……って言葉をそのまんま解釈すれば、運動ができるモテそうな連中、あるいはくだらないことばかり喋ってゲラゲラ笑ってるファニーな運動バカ、みたいなイメージが勝手に浮かんでくるわけだが(?)、自分たちでそう名乗るだけあって、ジム・クラス・ヒーローズ(以下GCH)はもちろんただのアホではない。それどころか、予想どおり相当クレヴァーで、予想以上に音楽バカな奴らのようだ。

「バンド名に関してはオレが犯人さ。最初はジム・クラス・オールスターズって名乗ってたんだけど、長すぎるからGCHに改名したんだ。オレとマット(・マッギンリー、ドラムス)が体育の時間に出会ったから付けた名前で、特に隠れた意味とかもないし、名前と音楽とが連動してるわけでもない。オレたちがどんな音楽をやっているかは、聴いてもらえればすぐわかるよ」(トラヴィス・マッコイ、MC/ヴォーカル)。

 いまやケイティ・ペリーの彼氏としても有名なトラヴィスだが、そうでなくてもGCHのニュー・アルバム『The Quilt』は注目すべき一作に違いない。スーパートランプの“Breakfast In America”をサンプリングした“Cupid's Chokehold”のスマッシュ、そして前作『As Cruel As School Children』の超ロング・ヒットに続く、実に2年ぶりのアルバムである。そのタイトルを〈キルト〉と名付けた意図は何だったのだろう。

「キルトというのはいろんな種類の生地をパッチワークしたものだろ? それぞれの生地が音楽の要素で、キルト全体がジム・クラス・ヒーローズなんだっていうコンセプトさ。この曲はボーダー、次の曲は星の模様、次は豹柄とかね。キルトを見ればアルバム全体の姿が見えるし、そこにはロックもあるし、レゲエもあるし、直球のヒップホップもある。けど、何かしらの統一性がある作品だってことを表現しているんだ。コンセプト・アルバムなんてものとは程遠いけど、まとまりもあるし、それぞれの曲に関連性もある。どれも若さとか遊び心ってテーマがあって、それからシリアスな部分もある」(トラヴィス)。

 その言葉が示すサウンドの幅広さ同様に、プロデューサーやゲストの顔ぶれも色とりどりだ。GCHを成功へと誘ったフォール・アウト・ボーイ(以下FOB)のパトリック・スタンプも当然参加しているが、今回はマイアミ・シーンのヒット請負人であるクール&ドレー、売れっ子ソングライター兼シンガーのドリームといった大物が采配を振るう。トラヴィス憧れのダリル・ホールを迎える一方ではエステルやバスタ・ライムズもフィーチャーしていたり、アーバン的なアプローチを強めながら振り幅をいっそう広げた内容なのだ。

「それが狙いだからね。だって、オレたちはまさに自分たちのファンを映す鏡なんだよ。ライヴの時にステージから客席を見ると、オレたち4人のような奴らがいるんだ。バスの中から入り口の列とかを見てても、オタクもサグもセクシーな女の子も、いかにもなインディー・ロック好きから思いきりヒップホップな奴まで、いろんな人たちが並んでくれてる。クレイジーだよね、そんな幅広い人たちがオレらをサポートしてくれてるなんてさ」(トラヴィス)。

「幅広い人たちにアピールするために音楽性や方針を変えたりはしないけど、自分たちの影響源や個々の経験なんかを合わせると、自然とそういう振り幅になるんだと思う。それで、結果的にはオープンマインドな人たちにアピールできてるんじゃないかな」(マット)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年10月30日 01:00

更新: 2008年10月30日 17:19

ソース: 『bounce』 304号(2008/10/25)

文/出嶌 孝次