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インタビュー

GYM CLASS HEROES(2)

好きなことをやってるだけ

 そのなかからリード・シングルに選ばれたのは“Cookie Jar”。T・ペイン“Buy U A Drank(Shawty Snappin')”も引用しながらドリームらしいフックを耳残りさせる曲で、〈彼女に誠実でいたいけど、旨そうなクッキー(女の子)に目がくらむ〉と歌うだけのバカバカしさが楽しい。

「ラジオで聴いてもらっただけでは現実的に伝わらない曲も多い。その点、“Cookie Jar”はガチで楽しいクラブ・トラックだから間違いないなって思った。単にオモロいだけの歌だしね。だってリル・ウェインの“Lollipop”の人気を考えてもみろよ。〈キャンディーみたいにナメられた~い〉なんてさ? 彼はもっと良い歌もできるのに〈ラジオしか聴かない人にも何か仕掛けよう〉って思ったわけじゃん。“Cookie Jar”もそういうことなんだ。レヴェルを下げるとかヌルいことをやるっていう意味じゃなくてアプローチ方法の話だよ」(トラヴィス)。

 このように柔軟な姿勢で音楽に取り組む彼らだが、アルバムの中身は先立ってもトラヴィスが語ってくれたように多彩だ。ストリクトリーなラップ・チューンが飛び出したかと思えば、ディケイダンス印のバンド・サウンドに興奮させられ、かと思えばまろやかな歌モノで温かい気持ちにさせられたりもする。その自由闊達なスタンスはオルタナ以前の未分化なミクスチャーっぽい印象が強く(GCHはレッチリ“Under The Bridge”のカヴァーも発表済み)、往年のリンプ・ビズキットのように足し算的なヒップホップ+ロック勢にはなかったものだろう。

「レッチリあたりの影響は大アリだけど、指摘のとおり、リンプ・ビズキットとかは関係ないね~。ヘヴィー・ロック自体からの影響なら少しはあるけど」(トラヴィス)。

「でも、リンプなんかありえねえよ」(ディサーシ・ラムンバ・カサンゴ、ギター)。

 手厳しい! とにかく、GCHの台頭とシンクロしてヒップホップ/R&Bとロックの新しい結び付きが提示され、おもしろいサウンドが増加していることは確かだろうし、彼らのユニークさはいまや先達のFOBにまで影響を与えている気すらするのだが。

「そうだね。FOBとオレたちがお互いに刺激し合って……そういう意味での相乗効果はあると思う」(ディサーシ・ラムンバ・カサンゴ、ギター)。

「特に意識はしないけど、先駆けと言われりゃ悪い気はしないよ。でも、オレたちはオレたちの好きな要素を採り入れて、オレたちなりのサウンドを作ってるだけなのさ」(トラヴィス)。
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年10月30日 01:00

更新: 2008年10月30日 17:19

ソース: 『bounce』 304号(2008/10/25)

文/出嶌 孝次