インタビュー

Dir en grey(2)

日本にこそ、振り向かせたい人がいる

 ぶっちゃけ、デビュー当時の彼らと出世争いをしていたバンドたちの大半は、時代の流れに呑まれて姿を消してしまった。そんななかで彼らにも、実は進むべき方向が見えずにいた時期があったのだ。ただし、もちろんこれは現在のDIR EN GREYの視線が海外にばかり向けられているという意味ではない。今回リリースされたニュー・アルバム『UROBOROS』は、日本を含む世界17か国でほぼ同時にリリースされているが、だからといって海外のマーケットを意識しながら作られたものではないのだ。

「アメリカのレーベルからは、〈こっちで売るためには、もっとこういう要素が欲しい〉とか、そういった具体的なリクエストも来るんです。もちろん自分らとしても、いろんな人の耳に届いてほしいという気持ちはあるから、納得できる要求ならばそれに沿う努力をすることもありますよ。でも基本的には、極力そういうことには耳を貸さないようにして(笑)、自分たちが貫くべきものを守りながら、作品やライヴそのものの説得力によってみんなを振り返らせたいんです」。

 実に頼もしい言葉だ。さらに以下のように発言を続ける。

「正直、欧米での状況というのは、ここ数年の〈日本ブーム〉と無関係ではないところもあるし、当初はある種の〈物珍しさ〉から注目されたところもあったと思うんです。ただ、それが徐々に、本当に少しずつではありますけど変わってきている実感がある。そうした変化をもっと大きなものにしていきたいし、そのためには説得力のある音楽を作って、それ自体に何かを語らせるしかない。それと同時に、そういうものを作り続けていくこと自体が、自分たち自身が何よりも望んでいることでもあるわけなんです」。

 このインタヴューが皆さんの目に届く頃には、11月上旬からスタートした1か月間で22公演という過密スケジュールで行われてきたUSツアーも終盤に近付いている。さらには、『UROBOROS』に対する世界各国からの反応も、そろそろ届いていることだろう。5人のメンバーたちが異口同音に語っているのは、この作品が〈現時点での最高傑作〉ということであり、〈自分たちのすべてが凝縮された状態で封じ込められた作品〉という事実だ。まさにDIR EN GREYというバンドとイコールで結ばれた関係にある『UROBOROS』は、2009年のロック・シーンを占ううえで最重要な作品のひとつと言っていいだろう。そして、われわれが忘れてはならないもうひとつの大切なこと。それは、DIR EN GREYのロックが巻き起こしているさまざまな現象の震源地が、ここ日本であるという揺るぎない事実なのだ。

 最後にもうひとつだけ、彼の発言を。

「DIR EN GREYは日本のバンドなんです。それは変わりようがないし、変えたいとも思わない。それに、ここ日本にこそ、本当に振り向かせたい人たちがたくさんいることも事実なんで」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年12月04日 06:00

更新: 2008年12月04日 18:28

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/増田 勇一