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インタビュー

THE BIRD AND THE BEE

かつてあなたは〈未来〉に何を思い描いてた? もしかして、その後ろにはこんなポップソングが流れていたんじゃないかしら。あの時の夢をたっぷり詰め込んで、いざ時空を超えた音楽旅行へ!

ヒッチコック×SF映画!?


  イナラ・ジョージ(ヴォーカル/ベース)はヴァン・ダイク・パークスとのコラボレーションによるソロ2作目『An Invitation』を夏に発表し、グレッグ・カースティン(プロデュース)はカイリー・ミノーグからドナ・サマーまで数多くの作品のコンポーズやプロデュースを手掛けていた。このようにそれぞれが多忙であった2008年だが、そんななかでも時間を作り、ふたりはバード・アンド・ザ・ビーの2作目をレコーディングしていた。

「他の人との仕事をしながらも、今日は2時間、明日も2時間といった感じで作っていったんだ。ミキシングなんかの作業も合わせたら、今回は2か月くらいで作り終えたかな」(グレッグ)。

「ただ、曲自体は前作『The Bird And The Bee』が出てからすぐに遊び半分で書きはじめていたわよね」(イナラ)。

「ちょっとずつアイデアを貯めていたからね。ひとつひとつ曲を作っていって、まとまりを見ながらアルバムにしていくという作業だったんだ」(グレッグ)。

 こうして完成したのが、約2年ぶりのニュー・アルバム『Rays Guns Are Not Just The Future』だ。この長いタイトルはイナラが付けたという。

「〈60 Minutes〉というTVのニュース番組で、〈Ray Gun(光線銃)〉について取り上げているのを観たのがきっかけだったの。〈Ray Gun〉は軍が開発したもので、実物は私たちが想像するような、ひとりの人間に狙いを定めて撃つというようなものとは違うんだけど。それを観て思ったのは、恐らく〈Ray Gun〉っていう呼び名はSF作家か誰かが考案したものなんじゃないのかな、って。で、その人が描いた未来のイメージを、別の誰かが実現してしまうなんて凄いことだと考えたのよ。言葉の響きがどこかSFっぽい感じじゃない?」(イナラ)。

 そう、そんなSFめいた感覚が今作のサウンドにも反映されている。といっても、2000年代におけるSFではなく、かつて人々が夢見たような、いま思うとちょっとチープな未来空間。このアルバムの邦題は〈ナツカシイ未来〉と付けられているのだが、まさにそんな感じだ。で、ジャケットのアートワークも然り。

「狙いとしては、ヒッチコックのスパイ映画と、50~60年代のSF的なグラフィック・アートを合わせたような感じかしら」(イナラ)。

 レトロでドリーミーでファンタスティックな、このSFスパイ・ムーヴィー(風の)作品『Ray Guns Are Not Just The Future』。監督がグレッグなら、主演はもちろんイナラで、彼女はまさに女優のようにキャラを演じ分けながら歌っている。それがなんだか楽しそう。

「ソロ作品では素の自分を表現したりするけど、バード・アンド・ザ・ビーではいろんなコンセプトに合った別人格を作り出していて、それを演じる楽しさがある。簡単に言うとバード・アンド・ザ・ビーのほうがオーヴァーなのよね、いろんな意味で。だから私も遊べるし、シアトリカルな表現をすることができるの。今回は前作よりもヴォーカルに力を入れたつもりよ」(イナラ)。

「うん、確かにイナラは今回ヴォーカルに力を入れてたね。かなりいろんなスタイルで歌っているよ。多くのショウをやっていくなかで、そういうシアトリカルな表現をもっと前に押し出せるようになったんじゃない?」(グレッグ)。

「ええ、それはあると思うわ」(イナラ)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年12月11日 16:00

更新: 2008年12月11日 17:50

ソース: 『bounce』 305号(2008/11/25)

文/内本 順一