インタビュー

RED SPIDER

より多くの人へ大好きな音楽を届けるために、より熱い夜を迎えるために──いまここにクレイジーなレゲエ・ラヴァーの新たな挑戦が始まる!

何でいまさらこんなミックスCD?


  〈ROCK CITY〉〈YOUNG BLOOD〉といったメジャー経由のシリーズ・コンピや、カエルスタジオからのミックスCDをコンスタントに発表し、MINMIをはじめとするアーティストへの楽曲提供並びにプロデュースも盛んに行い、さらにはサウンドマンとして〈ZUM ZUM NIGHT〉などのイヴェントをオーガナイズ、そして昨年末には1サウンドで5,000人以上のオーディエンスを集めるというビッグ・ダンス〈緊急事態〉も敢行……と、セールス的にも集客的にも停滞気味にあるジャパニーズ・レゲエ・シーンをよそに、留まることを知らない活動を展開しているRED SPIDER。現在ワンマン・サウンドとしてそのRED SPIDERを切り盛りしているのが、今回インタヴューに応じてくれたJUNIORだ。彼がレゲエにハマったのは、実兄であるDJのSILVER KINGにクラブへと連れて行かれた16歳の頃。当時のトップDJ、シャバ・ランクスやブジュ・バントンの曲に始まって、サウンドシステムのミックステープなどにも触れるようになり、それらを通じて知った楽曲やMCのスタイルを手本にすぐ地元の仲間とサウンドを立ち上げたという。

 「地元の連れとかとライヴハウスを借りて遊びでやりはじめたんですけど、ジャマイカに行ってからですね、音楽でメシを食いたいと本気で思ったんは」。

 このたび完成したばかりの最新ミックスCD『KRAZY LOVE MIX』は、そんなJUNIORが「レゲエを聴きはじめた頃に毎日聴いてた」という名曲で、かつ「サウンドをやり出した当時のいわばルーツ」ともなる歌モノ中心のナンバー全44曲を、「聴きやすさ重視でミックスした」ものである。

 「確かにこういうのって結構ブートもんだとよく出回ってるから、〈何でいまさらこのミックスCD?〉って思う人たちもおるかも知れんけど、最近レゲエを知って興味を持った人ってたくさんいてると思うし、誰か好きな日本人アーティストがいて、それのみがレゲエって思ってる人も多いと思う。でも実際はそれだけじゃない。俺もちょっとはサウンドマンとして知名度も出てきたから、それを利用してもっとレゲエを深く理解してもらえたらなって思いから作ったんです」。

 ベレス・ハモンド、サンチェス、ガーネット・シルク、バーリントン・リーヴィ、そしてシャバ・ランクスなどなど、90年代を飾った、そしていまも現場を揺らし続ける、いずれ劣らぬジャマイカのトップ・アーティストたちによる人気曲を集めた内容は、とりわけ30代より上のレゲエ・ファンにとってはもはやお馴染みのものばかりだろう。しかし、日々増えていく新たなリスナーにとっては、一つ一つがジャマイカに残る〈未知の遺産〉ともいうべきものであることも確かだ。JUNIORも熟知するアンダーグラウンドなマーケットではなく、メジャーの大きなマーケットにそれが乗ることの意味も、彼自身がいちばんよくわかっているのではないだろうか?

 「日本のレゲエ・シーンも大きく成長しているし、こういう音源をオフィシャルで全部ライセンスして作品として世の中に残していくこと、そして広く伝えていくことも大切なんじゃないかな。ただ、ビックリするぐらい許可を取るのが大変でしたね。ライセンスに時間がかかり、選曲を何回もバラしたし(笑)。コノ曲あかん、アノ曲あかんって縛られた状態で。まだまだ入れたい曲はたくさんあるんやけど、最終的に良いミックスが作れたと思ってます」。

▼RED SPIDERの関連作品を紹介。


99年のライヴ盤『激録マスターズ・オブ・ラバダブ 99』(カエルスタジオ)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年07月29日 19:00

更新: 2009年08月21日 10:42

ソース: 『bounce』 312号(2009/7/25)

文/一ノ木 裕之