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インタビュー

ARCTIC MONKEYS

UKロック・シーンの寵児が、その枠組から飛び出すべくUS西海岸の砂漠地帯に赴いた。誰かの猿真似なんかじゃない、自分たちだけのタフでヘヴィーで最高にかっこいいロックを探し求めて……

葛藤があったらやりにくいだろ?

  今回アークティック・モンキーズの面々は、ニュー・アルバム『Humbug』のレコーディングをUSのモハーヴェ砂漠地帯にあるヨシュアトゥリーでまずスタートさせた。初の国外レコーディングが、カリフォルニア州からアリゾナ州まで4州に跨る広大な砂漠にて行われたという事実は、23歳そこそこのいまだ若きこのバンドに影響を及ぼさないわけがない。実際、ニック・オマリー(ベース)によれば「最初にヨシュアトゥリーでレコーディングしたので、その雰囲気がアルバム全体にもたらされた」とのこと。もっとも、彼らがこの地に赴いた理由はシンプル。今作のプロデュースを手掛けたひとり、ジョシュ・オム(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、以下QOTSA)の出身地がまさにそこであり、彼と腰を据えて作品を作るためだった。

 「ジョシュからはいろんなことを学んだと思う。時間が空いた時はいっしょに実験的な音遊びもしたし。ジョシュとの仕事は初めてだったけど、すごく上手くいった気がする。たぶん僕らが完璧に防備を崩し、何ていうか、裸でギター1本だけを持ってレコーディングに向かえたのが良かったんだろうね。それがすごくオープンに、建設的な結果に結び付いたんだと思うよ。そういう姿勢って重要だよね。もしスタジオ内で葛藤があったりしたらやりにくいから」(アレックス・ターナー、ヴォーカル/ギター)。

 「メンバー全員、いろんな意味でジョシュに押し上げられたと思う。それぞれのパートを録って自分たちではこれでOKだと思っても、ジョシュは〈もっと良くしよう〉って要求してくるんだ。それが僕らにとっても良かった。最高のものを引き出してくれたからね。すごく励みになったよ」(ジェイミー・クック、ギター)。

 2006年のデビュー・アルバム『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』で、楽器を手にしたばかりのぎこちなさとは裏腹の、ロックもパンクもヒップホップもトラディショナル・ミュージックもソウルも豪快かつ巧みに呑み込んだ音楽性と共にUKロック・シーンに躍り出たアークティック・モンキーズの4人。続く2007年リリースの『Favourite Worst Nightmare』ではサウンド傾向が一転。ハード・ロックやマス・ロックまでを視野に入れた激しくも痛快な出音が、実はQOTSAにインスパイアされていたことは、もしかしたら有名な話かもしれない。2作目のリリース後に念願叶ってジョシュの知己を得て、そのままニュー・アルバムのプロデュースを依頼するまでトントン拍子に話が進んだのは、しかしむしろ意外でもあった。何しろこのバンドは、自分たちも含む誰とも同じことはやらないという揺るがぬ意志を、最初から強く抱いていたのだから。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年08月19日 18:00

ソース: 『bounce』 313号(2009/8/25)

文/妹沢 奈美