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インタビュー

大橋トリオ

晴れやかで彩り豊かなサウンド、風のように吹き抜ける歌、胸が躍るリズム――年齢も性別も時代も問わない珠玉のポップソングが、あなたの心に魔法をかける!

音質はすごく大事にしたい

  もし、大橋トリオを単に心地の良いポップス、くらいに軽く考えている人がいるなら、まずはニュー・アルバム『I Got Rhythm?』を丁寧に聴いてみてほしい。できればヘッドフォンで一音一音に気を配りながら。するとおそらく、ただメロディーや歌を追いかけながら曲を聴いているだけでは気付かなかったことを、いくつか発見できるはずだ。ああ、こういう楽しみ方が大橋トリオにはあるのだ、と。

 「僕、あまり自分が影響を受けた音楽を話したりするのが得意じゃないんです。あまり知られたくないっていうのもあるし、恥ずかしいというのもある。聴いてもらって〈想像に任せますよ〉ってところです。でも、よく聴いてもらえれば、音の一つ一つにいろんな音楽の要素が出ていると思いますけどね」。

 他アーティストのプロデュースや映画のサントラ制作なども手掛ける、マルチ・プレイヤーにしてシンガー・ソングライターの大橋好規によるソロ・プロジェクト、大橋トリオ。寡黙で飄々とした佇まいの彼は、これまで裏方としての仕事が多かったのだが、今年5月にメジャー・デビューしてからというものライヴはおろか授賞式(第一回〈CDショップ大賞〉準大賞に選ばれた)に至るまで、表舞台へ引っ張り出されることが増えたのは衆知の通りだろう。誰もが親しめてカジュアルに聴けるポップスをめざす一方で、ジャズからクラブ・ミュージックにまで精通した熱心な音楽ファンであり、エンジニアも唸るほどの耳の持ち主としても知られている。人気を獲得したいまこそ、そんな大衆性とマニアックな感覚との間でジレンマが起こることなどはないのだろうか? 新作の話の前に、そんな素朴な疑問からしてみた。

 「もちろん迷うことはあります。でも、例えば〈迷った時はこれに立ち返る〉というような作品があるかと言えば……(長い沈黙)ないです。あるとすれば、音ですね。この作品の音がいい、というような。つまり、僕はそうやって好きな音楽を採り入れているところがあるんです。実は小学生の頃、友達の家に遊びに行った時、音の悪いラジカセでビートルズがよくかかっていて。その時の悪い印象がず~っと残っていたから、ビートルズをちゃんと聴くのが遅れたんです(笑)。だから、アルバムを作るうえで音質はすごく大事にしたくて。もちろん曲とか音楽性も大切ですけど、影響が出るのは〈音質〉。もともとレコーディング・エンジニアになっても良かったくらい音質へのこだわりがあるんです。今回のアルバムにも、そういう意味で、好きな作品からの影響が音質そのものに出ていると思いますよ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年11月25日 18:00

更新: 2009年11月25日 18:23

ソース: 『bounce』 316号(2009/11/25)

文/岡村 詩野