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インタビュー

INTERVIEW(2)——わりと淡々としてて、温度が全部低い



わりと淡々としてて、温度が全部低い



GOATBED



——今作には5月にリリースされたゲームのサントラ『- shape.memory.music - DRAMAtical Murder soundtrack』から2曲の別ヴァージョンも収録されてますが、ご自身の使いたいハードを導入したのは、サントラのタイミングからですか?

「そこからやってみようかって思いましたよ。思いましたけど、あのときもすごく過酷なスケジュールだったんですよ、ホントに」

——去年の秋頃ですね。そう言えば追い込まれていらっしゃいました。

「曲数も多いし、cali≠gariのレコーディングもあったし、ツアーもやってたし。それが同時進行だったから、そこではいま言ったようなことの半分もできなかったんですよ。キックだけあとでアナログの音源に差し替えるとか、その程度。それを今回は全部やりましたね」

——確か、サントラを制作されてた頃は、アシュラ(アシュ・ラ・テンペル)を聴いてるっておっしゃってたと思うんですけども。

「アシュラはね、サントラを作ってたときっていうか、もう年中アシュラですよ(笑)。何かのタイミングで聴きますよね。ソロ名義のものも含めるとものすごい数出てますから、どこのアシュラにしようか、みたいな」

——“Only finally there is free END”は、シンセの質感が『E2-E4』(84年)の頃のマニュエル・ゲッチング(アシュ・ラ・テンペルのギタリスト)と通じるものがあるなあ、と。もう1曲のパーカッシヴな“Paramidia”も新たな方向性を感じさせる曲でしたが、サントラで初めてGOATBEDに触れたリスナーも多くいるこのタイミングで、石井さんとしてはどういう音を打ち出そうと考えていらっしゃいました?

「ゲームのサントラは、気持ち的には楽曲を提供するっていう形だったから、自分のエゴがどうこうっていうのはあまり関係なかったんですよね。発注を受けて、そこに+αで自分から〈こうしたほうがいいんじゃないか〉って、そういう折衷案みたいな……作り方としてはそういうものだったので、GOATBED名義で出す音源に関しては、全然違うな、って思わせるもののほうがいいなと思ったんですよ。なんとなくそういうひねくれた考えがあって、そうしたら出来た曲が明るくもなく暗くもなく、っていうね。わりと淡々としてて、温度が全部低いなと思って。俺、そういう音楽が好きなんで、無意識に作ってるとそういうふうになりがちなんですよね、実は。そこを、サントラの2曲に助けてもらいますか、みたいな(笑)」

——(笑)いま〈温度が低めの音が好み〉っておっしゃいましたけど、具体的にどこらへんですか? 先ほど出たアシュラじゃないですけど、クラウト・ロックのようなテクノ前夜の響きもあると思うんですが……。

「そうですね。クラウト・ロックはもう昔から好きで。でもそれを前面に打ち出したりしたこともないし、そうすることが得策だともまったく思ってないんですよ。そういうことをやり出したら、俺みたいなやつは終わりだと思ってて(笑)。だけどおっしゃってることはわかります。シンセの音色だったりフレーズだったりっていう部分で、そっちに寄ってるのかなって思うような曲はありますね。そういうものと、あとはプリミティヴなテクノの響きというか、音響? それが自分のなかで……ブームっていう言い方もあれなんだけども、自分の好きだったテクノっていまみたいなのじゃなかったなと思って。だけど、いまみたいなものじゃなかったなって思ってたら、いまは結構そこに戻ってきてるものもあるじゃないですか」

——90年代を匂わせる質感の作品もまた出てきてますね。

「いまって〈エレクトロ〉って言われるものと〈テクノ〉って言われるものが完全に分かれましたよね。音響の部分でも、〈エレクトロ〉はキックの音をでっかく鳴らして、ブイブイいったベースにサイドチェーンっていう手法でコンプをかけるんですけど、そうすると、グワングワン揺れたサウンドになる。で、いま結構、自分が好きで聴いてるテクノ……テクノっていうかわかんないけど、そういうミュージシャンなんかは、音色でもリヴァーブを全然使ってなかったり。ちょっと鉄っぽいような、乾いてて冷たいシンセの音。そんなのが結構増えてきてますよね」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年08月08日 18:00

更新: 2012年08月08日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓