こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

LONG REVIEW――GOATBED 『HELLBLAU』



GOATBED_J170

近年はcali≠gariとXA-VATの2バンドを展開してきた石井秀仁は、久々にGOATBEDの名を掲げ、この5月にPCゲーム〈DRAMAtical Murder〉のサントラをリリース。そして今回、ミニ・アルバム『HELLBLAU』を完成させた。彼は複数のプロジェクトを通じて、自身の持つニューウェイヴ魂をさまざまなスタイルで表現してきたわけだが、GOATBEDとしてはエレクトロ・ポップにググッとフォーカス。特に本作では、4つ打ちのダンス・オリエンテッドなサウンドを全面的に展開している。

冒頭の“D.O.G.M.A”は、クラフトワークに直球でオマージュを捧げるヴォコーダー使いのナンバーなのだが、ここで踏襲されているのはかのテクノ・ゴッドファーザーのオリジナル作品ではなく、91年に発表されたセルフ・リメイク作『The Mix』のサウンドである……ということが本作のスタンスを象徴しているかもしれない。つまり、ニューウェイヴ期のエレポップを、90年代以降のダンス・ミュージックの流儀で解釈しているのだ。それゆえにヴォーカルの比重は石井の関わった諸作に比べると少なめだが(インストのミニマル・テクノ“Hard Liminal”なんて曲も)、それでもあのグラマラスな歌声が適材適所で登場し、淫靡な色艶をアルバムに注ぎ込んでいる。

とりわけ素晴らしいのが、上述のサントラの収録曲を改変した“Only finally there is free END+”。ニュー・オーダー経由のメランコリックなメロディーをアーバンなシンセ・サウンドでコーティングしたナンバーで、Dorianを支持するダンス・ミュージック・ラヴァーや、カット・コピー好きのインディー・キッズの胸をも揺り動かす魅力を備えているように思う。


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年08月08日 18:00

更新: 2012年08月08日 18:00

文/澤田大輔