HURTS――ニューウェイヴ時代の薫りをふわりと纏った、スタイリッシュな貴公子たち
アダム・アンダーソン(シンセサイザー)とセオ・ハッチクラフト(ヴォーカル)から成るマンチェスターのハンサム・デュオ、ハーツから、『Happiness』(2010年)以来となる注目のセカンド・アルバム『Exile』が到着しました。初の世界ツアーを経て、今回はアリーナ映えする音作りに挑戦したんだとか。
「最初に思ったのは、もっとヘヴィーに、もっとテンポが速く、もっとエキサイティングなものにすべきということだったよ」(アダム)。
そこで目を付けたのはインダストリアル・ミュージック。ラムシュタインのリミックスを手掛けたこともある彼らだけに意外ではありませんが、何でもこの2〜3年はナイン・インチ・ネイルズをよく聴いていたそうです。
「でも、好きな音楽をただコピーすることはできないんだ。本質的に自分たちの音楽しか作れないってことをずっと前に学んだからね」(セオ)。
その言葉通り、実際にディストーション・ギターや不穏なノイズがたくさん散りばめられていますが、それらはあくまでも〈ハーツ印〉のニューウェイヴ浪漫たっぷりなエレポップを、よりドラマティックに演出するための一要素に過ぎない、といった印象。「ハドソン・モホークみたいな音をポップスとして作ろうと思った」(セオ)と語るトラップ系のビートがユニークな“Sandman”にしても、結局のところ耳に残るのは厚みのあるコーラスと感傷的なメロディー、そしてダンディーな歌声。スタイリッシュな衣装やきちんと撫で付けられたヘアスタイル同様、好きな音楽に対するアプローチ方法も徹底してスマートってわけですね。
聴き終えてどことなくティアーズ・フォー・フィアーズっぽいな〜とも思ったのですが、そんな『Exile』についてアダムはこう形容しています。
「これはいままでとは違った形の勇気なんだ」。
▼関連作を紹介。
左から、ハーツの2010年作『Happiness』(Major Label/RCA)、ハーツのリミックスを収めたレディ・ガガの『Born This Way Remix』(KonLive/Streamline/Interscope)