インタビュー

DEPECHE MODE――レーベル移籍を経てリフレッシュした大御所トリオのネクスト・デイ

 

 

デヴィッド・ボウイの“Heroes”といえば、デペッシュ・モード加入にあたってのセッションにて、デイヴ・ガーン(ヴォーカル)が同曲を歌ってバンドに認められた……という逸話も(いささか強引に)思い出される。だから『The Next Day』と近いタイミングでデペッシュ・モードが2009年の『Sound Of The Universe』以来となるアルバム『Delta Machine』を完成させてきたというのは、奇妙な巡り合わせのようにも思えたりもしないだろうか。

もちろん、それは4年に1作というここ最近のDMサイクルにたまたまボウイがかぶってきただけのことではある。DMにとってはデビュー以来の拠点だったミュートを離れてコロムビアへ移籍、その間に各々が揃って50代を迎えるなど、いろんな意味で節目になる新作という意味合いのほうが強いはずだ。この4年の間には、デイヴがソウルセイヴァーズのアルバムで丸ごとコラボを経験、マーティン・ゴア(キーボード/ヴォーカル)もボム・ザ・ベースの“Milakia”やモーターの“Man Made Machine”で歌うなど、外部との交流が各々をリフレッシュした。何よりマーティンは、結成メンバーにしてデビュー直後に脱退したヴィンス・クラークとの再会もVCMGで実現しているのだ。ノスタルジー以上の気概を彼が取り戻したとしてもおかしくはないだろう。

果たして『Delta Machine』での彼らは、ここ数年で洗練されてきたDMとしての王道性に、改めてアナログ感や肉体性といった生々しさを持ち込むことに成功している。あのジョニー・キャッシュもカヴァーしたほどの歌声はさらに聖なる領域に近づき、馴染みのベン・ヒリアーによるミニマルなサウンドも温かみを増した。DMもまた、自分たちの〈The Next Day〉を最高の形で迎えたのではないか……そんな大作である。

 

▼関連作を紹介。

左から、デペッシュ・モードの2009年作『Sounds Of The Universe』(Mute)、ソウルセイヴァーズの2012年作『The Light The Dead See』(V2)、VCMGの2012年作『Ssss』(Mute)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年04月03日 17:58

更新: 2013年04月03日 17:58

ソース: bounce 353号(2013年3月25日発行)

文/轟ひろみ